2020年01月17日

ジャパンキャンサーフォーラム2019 講演「リンパ浮腫」より (1)~リンパ浮腫のリスクとなる乳がん治療とは~

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登壇した一般社団法人日本リンパ浮腫学会理事長で
貝塚病院・乳腺外科部長の北村薫先生

 2019年8月、国立がんセンター築地キャンパス研究棟にて開催された「ジャパンキャンサーフォーラム2019」(主催・運営:認定NPO法人キャンサーネットジャパン)において、貝塚病院・乳腺外科部長で、一般社団法人日本リンパ浮腫学会理事長の北村薫先生が登壇。

 「リンパ浮腫 〜リンパ浮腫学におけるエビデンスと実臨床のギャップ」(共催・一般社団法人日本リンパ浮腫学会)と題した講演が行われました。

 乳がん治療の後遺症のひとつ「リンパ浮腫」の予防や治療に精力的に取り組んでいる北村先生の講演をもとに、リンパ浮腫のリスクとなる乳がん治療、そしてリンパ浮腫の病期について紹介します。


開演の挨拶を行った司会の一般社団法人日本リンパ浮腫学会・
小口秀紀副理事長(トヨタ記念病院副院長)

腋窩リンパ節郭清、術後の放射線治療、化学療法がリンパ浮腫のリスクに

 リンパ浮腫はよく「浮腫」と混同されやすいのですが、「浮腫」は一般的にむくみと言われているもので、本来であれば静脈を介して回収される水分が、さまざまな理由で十分に回収されず、組織にたまっている状態です。

 一方リンパ浮腫は、リンパ管の機能が低下して組織にタンパク質などの老廃物や水が回収されずに、タンパク質を多く含んだ液体がたまっている状態をいいます。

 リンパ浮腫には、特に原因もないのに発症する原発性(または一次性)のものと、あきらかに原因が把握できる続発性(二次性)のものがありますが、日本で最も多いのはがん治療の後遺症として発生する続発性(二次性)のリンパ浮腫です。

 腕など上肢のリンパ浮腫の原因となりうるのが、乳がんの治療。下肢のリンパ浮腫の原因となりうるのが、子宮がん・卵巣がん、前立腺がん、尿路・膀胱がん、直腸がんなどの治療です。

 乳がん治療におけるリンパ浮腫のリスク因子には、拡大術式による乳房切除、腋窩リンパ節郭清、術後の放射線治療、タキサン系抗がん剤などの化学療法、そして転移や再発で、リンパ腺が腫れる、しこりができるといった場合もリスクとなります。

センチネルリンパ節生検でも、リンパ浮腫の可能性はゼロではない

 腋窩をさわればどのような治療でも上肢リンパ浮腫は起きる可能性はあります。

 2006年から行われた日本乳癌学会の北村先生の班による研究「リンパ浮腫の実態調査と治療・予防ガイドラインの作成」によれば、左右の腕の周径差が1cm以上を発症と定義した場合、腋窩リンパ節郭清を行った患者のリンパ浮腫の発症率は54%、センチネルリンパ節生検を行なった患者の発症率は34.1%という調査結果が出ました。

 つまりセンチネルリンパ節生検だからといって、リンパ浮腫の可能性がゼロではないのです。

リンパ浮腫の病期(ステージ)と予防

 リンパ浮腫にもステージ(病期)があり、乳がんの手術をしたが症状がない人は0期にあたります。I期からは症状があり、予防できるのは0期までです。

 指圧痕の確認は、指の腹で10秒くらい軽く押す程度で大丈夫です。II期後期になると押しても凹まなくなるため(指圧痕陰性化)、「良くなった」と勘違いする人もいますが、これは重症化のサインです。

<リンパ浮腫の病期(ISL分類)>
0期:理学所見なし
I期:安静で解消する症状、指圧痕あり
II期:安静で解消しない症状
II期後期:線維化(+)、指圧痕陰性化
Ⅲ期:組織のさらなる硬化・線維化と皮膚病変(象皮症など)
※線維化...組織が硬くなった状態

 病院に来る時には、病状が進んでいて、すでにII期という人が多いのが実情です。

 2006年の日本乳癌学会の北村先生の班による研究「リンパ浮腫の実態調査と治療・予防ガイドラインの作成」によると、軽症(腕の周径の左右差が1〜2cm)のうち76.6%に自覚症状はなく、重症(腕の周径の左右差が2cm〜)でも23.4%の人に自覚症状はなかったという結果が出ました。

 早期発見のためにおすすめしたいのは周径測定です。同じ時間帯、同じ姿勢で測り、記録することが大切です。まずは手術前に、それから手術後は3ヶ月ごとに。変化があったらすぐに病院にいきましょう。


■取材・文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。

(日本医療・健康情報研究所)

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