2018年04月12日

がんと就労(1) 広がる病院内での就労相談 〜社会保険労務士・近藤明美さんインタビュー〜

キーワード:治療と仕事
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 国立がん研究センターの調査(2012年)によると、がん患者さんの約3人に1人は就労可能年齢(20歳から64歳)。治療のため会社を辞めざるを得なくなるなど、働く世代のがん患者さんにとって「仕事との両立」は大きな問題です。2012年に発表された第2期がん対策推進基本計画に、個別目標として「がん患者の就労を含めた社会的な問題」への取り組みが含まれて以来、「がん患者さんへの就労支援」をとりまく状況はどのように変化し、今後どのように変わっていくのでしょう。

 2009年から「がん患者さんへの就労支援」に取り組んできた社会保険労務士で、乳がん経験者でもある近藤社会保険労務士事務所代表・近藤明美さんにお話をうかがいました。

2009年からがん患者さんの就労支援を開始

 法律事務所でパラリーガルとして勤務しながら、2007年社会保険労務士の資格を取り、2008年10月にはご自身の事務所を開業した近藤さん。がん患者さんの就労支援を始めたのは、2009年2月からでした。

 「『がんと就労』の第一人者である、キャンサー・ソリューションズ株式会社代表取締役・桜井なおみさんとご縁があってお会いしたのがきっかけです。2011年3月には、桜井さんたちとともに一般社団法人CSRプロジェクトを設立、副代表理事となりました。以来、CSRプロジェクトではがん患者さんの就労相談やサポートグループなど担当させていただいています」(近藤さん)

 また2010年には、職業訓練やキャリアカウンセリングを行う「KSRキャリアスクール」を設立。2011年6月からは、賢見卓也氏が理事長を務めるNPO法人「がんと暮らしを考える会」(当時は「医療・生命保険・制度をつなぐ」ブレストの会)に参加し、がん罹患に伴う経済的な問題の解決を目指す活動も開始しました。

 「私ががん患者さんの就労支援活動を始めた頃は、関係各所が『具体的にどうすれば?』と模索していた時期でした。制度に強い社労士と病院で連携して、患者さん達の相談にのれたらと考えていたのですが、『社労士って、何?』というような感じで、なかなか実現できませんでした」(近藤さん)

 しかし、2012年に発表された第2期がん対策推進基本計画に個別目標として「がん患者の就労への取り組み」が明示され、近藤さんも国の事業に参加したり、厚生労働省の研究班に呼ばれたりしているうちに、三井記念病院から声がかかり、2013年からがん患者さんを対象とした、社会保険労務士による就労相談会が始まりました。現在近藤さんは東京医科歯科大学、埼玉県立がんセンターを加えた3ヶ所の病院で就労相談会を行っています。

一度立ち止まらざるを得ない時に、必要な情報提供を

 徐々に増えてきた、病院での就労相談会ですが、「病院で相談を受けられる」ことに非常に意味があると近藤さんは言います。

 「診断時から関われるというのが、やはり大きいかと思います。検査を受けるだけでも、有給休暇を使うなど、就労に影響が出てきます。また治療をしながら働くことは時間的、体力的にはもちろん、精神的にも非常に大変なことです。がんというのは治すことのできる病気ですが、これまで思い描いていたキャリアプランや、結婚などの人生設計など、一度立ち止まって考え直さなければいけないほどの大きな転機となってしまいます。『これでいいのかな?』『病気になって私が悪いのかな?』といろんなことを思い悩んでしまうタイミングに、今後人生を歩んでいく上で必要な情報提供ができればと思っています」(近藤さん)

 相談会を行うようになった病院では、情報を必要としていそうな患者さんに対し、医療関係者から「こういう窓口があるけれど」と話をつなげてくれるケースが増えているそうで「ようやく形になってきた」と近藤さんは言います。

 ただ話をするだけでも気持ちが楽になり、考えが整理されることもあるので、早まって仕事を辞めてしまう前に、専門家に相談してみてはいかがでしょう。

■参考
近藤社会保険労務士事務所
KSRキャリアスクール
がんと暮らしを考える会

■取材・文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。

(日本医療・健康情報研究所)

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