2021年12月22日

妊娠期乳がんの治療と出産〜妊娠期乳がん経験者インタビュー〜

キーワード:ライフスタイル 治療
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 妊娠期乳がんとは、妊娠中から出産後1年以内に診断される乳がんのことです。妊娠・分娩が可能な年齢の女性において、乳がんの罹患率が増加しています。

 現在、妊娠中に診断されるがんの発生率は「2600〜5900出生のうち1ケース」であると報告されています(日本がん・生殖医療学会)。

 今回、妊娠期に乳がんが見つかり、治療を経て出産をした経験者の方にご協力いただき、お話をうかがいました。

 <Y・Tさん 44歳>
・2013年9月下旬、36歳で第2子を妊娠中(妊娠13週)に、右乳房に2つのHER2型乳がん(HER2陽性、ホルモン受容体陰性)が見つかる。うち1つは特殊型乳がん(浸潤性微小乳頭がん)。当時「ステージⅡA」と診断。
・2013年11月、妊娠期乳がんの症例が多い聖路加国際病院に転院。
・術前化学療法としてCAF療法を開始。しかしCAF療法の効果が現れなかったため、妊娠21週に手術(乳房切除術[全摘]+腋窩リンパ節郭清)。組織検査の結果、「ステージⅢC」の乳がんだったことが判明。
・妊娠24週、術後化学療法(パクリタキセル)を開始。
・2014年3月妊娠36週、帝王切開で出産。
・出産後、術後化学療法(ドセタキセル)、分子標的薬治療、放射線治療を行う。

妊娠13週で乳がんに。術前化学療法の効果が出ず、妊娠21週で手術


Y・Tさんが、将来娘さんに渡そうと作成した「超音波日記」。
乳がんと診断された時の悲しい気持ちが綴られている。

 ―――――妊娠13週で乳がんが見つかり、出産に対して迷いはありませんでしたか。

 増殖能の高いがんで、状況があまり良くないことはわかっていましたが、医師から「出産はどうしますか」と確認された時は、「産みたいです」と即答しました。超音波の画像で、確かにその子がいるのをもう見てしまっているんです。「私が受けた治療のために、この子が何かを背負って生きていかなければならなくなるかもしれない」と想像すると不安でしたが、それでも「生まれてくる意味はある」と思っていました。

 そして病院のサポートもあり、妊娠期乳がんの症例が多い聖路加国際病院へ転院したのですが、私のように順調に来た人はあまりいないようでした。「診断を受けた病院で『すぐに治療しないといけないので、子どもはあきらめてください』と言われ、セカンドオピニオンを受けて聖路加にたどり着いた」など、紆余曲折あったという人が多かったですね。

 ―――――出産まで、具体的にどういう治療を受けましたか。

 当初は3月の出産予定日に向けて、術前化学療法を行い、がんが小さくしてから出産と同時に乳房切除術(全摘)をするという予定でした。CAF療法という妊娠期乳がんの抗がん剤治療としては、最も安全性と有効性が示されている術前化学療法を1クール行いましたが、残念ながら改善の効果は見られませんでした。

 そこで急遽、予定を変更して術前化学療法を中止、妊娠21週に手術をすることに。組織検査の結果、「ステージⅢC」の乳がんだったことがわかりました。

 術後化学療法はCAF療法の効果がなかったため、パクリタキセルとカルボプラチンをセットで使用することに。「世界的に見ても妊娠期乳がんの患者さんで使用する例は少なく、胎児への影響はゼロとは言えない」と治療前のリスク説明を受け、正直不安な気持ちにはなりました。それまでも専門知識のあるスタッフのみなさんが、私の命もおなかの子どものことも慮って手を尽くしてくれているのはよくわかっていたので、承諾し、治療をうけました。

 2014年3月には帝王切開で出産。36週でしたので、ほんの少し早めですがほぼ正規産です。

セカンドオピニオンを利用し、納得のいく治療選択を

 ――――――大変な経験をなさってきましたが、振り返ってみてどう思われますか。

 次女が、病気もなく元気に成長しているのが心からうれしいです。私自身、先天性の病気のため、子どもの時に大きな手術や治療をしてきたので、そんな私が妊娠期乳がんになり、抗がん剤治療を経て出産した子が、今のところ丈夫に育ってくれていることが本当にありがたいと思っています。

 ――――――最後に、妊娠期乳がんの方に伝えたい想いがあったら、教えてください。

 私は環境にも恵まれたこともあり、治療、出産を経て、今こうしていますが、すべての方が妊娠期乳がんに強い病院に通えるかというとそうではない、状況的に難しい方もいると思います。「あきらめないで」なんて軽々しく言えないこともよくわかっています。

 それでも自分の知っているお医者さんに見てもらうだけで、後悔を残したまま選択をしてほしくない。最善の方法を見つけるための行動を惜しまないでほしいのです。

 地方に住まれている方は時間や経済面で負担になるかもしれませんが、妊娠乳がんの症例が多い病院にセカンドオピニオンを聞きに行ってみてください。もしかしたら、もう少し納得がいく状態で治療の選択ができるかもしれません。

 そして妊娠期乳がんで治療と出産をやり遂げようとしているみなさんに。厳しい状況に置かれて精神的にもつらくなるかと思いますが、患者会などに参加して妊娠期乳がんや若年性乳がんの人と想いを分かち合うのがオススメです。私も術後3日後に病院で開催されている会に参加したのですが「ひとりじゃないんだ」と涙し、その後前向きな気持ちになれました。


日本がん・生殖医療学会

■取材
・文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。

(日本医療・健康情報研究所)

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