2021年11月30日

位置のずれ、変形・・・乳がん手術後に起こる乳輪乳頭の悩み〜KSHS 第4回岩平ゼミ「乳輪乳頭温存後の乳房再建」から~

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一般社団法人KSHSが主催する「岩平ゼミ」で講師を務める
ブレストサージャリークリニック院長の岩平佳子先生

 一般社団法人KSHS (キチンと手術・ホンネで再建の会)が主催する「人工物(シリコンインプラント)による乳房再建」がテーマの少人数リアルセミナー「岩平ゼミ」。10月9日に開催された第4回では、「乳輪乳頭温存後の乳房再建」をテーマにした講義とQ&A、さらに乳房再建体験者の胸を見せていただく「体感会」が行われました。

 講師を務めるのはブレストサージャリークリニック院長で、1万件以上ものブレスト・インプラントによる再建の症例数を持つ、日本形成外科学会認定専門医の岩平佳子先生です。

 今記事では、乳輪乳頭を残して乳腺を全摘する「乳輪乳頭温存乳房切除術」、もしくは乳房部分切除術(温存手術)をしたあとに起こると、下記の悩みへの対処法をご紹介します。

・乳輪乳頭の位置がずれている
・左右の乳輪乳頭の形が違う
・患側の乳輪乳頭が壊死した

乳輪乳頭の位置が1個分以上ずれている場合は、健側をつけかえる


講義をする岩平佳子先生。少人数であるため参加者からの質問もしやすい

 「乳輪乳頭温存乳房切除術をした後にシリコンインプラントを入れて乳房再建するケースも増えていますが、乳輪乳頭の位置が左右でずれてしまったということで来院する人がいます」と岩平先生。

 治し方には、以下3つの方法があります。

 1.健側の胸が下垂している場合は、挙上または豊胸
 乳房の挙上とは、下垂した乳房の下部分を切除して縫合することで乳房を上向きに整える手術です。「『乳輪乳頭の下を縦に切って縫う』と聞くとびっくりする人が多いのですが、5〜10年経つと、手術した私がわからなくなるくらいキレイになります」(岩平先生)

 2.左右の乳輪乳頭が乳輪1個分以上ずれてしまっている場合は、健側の乳輪乳頭をつけかえる(移植)
 左右の乳輪乳頭が乳輪1個分以上ずれてしまっているときは、健側の乳輪乳頭を患側の位置と合わせてつけかえます(移植)。「移植して3年ほどすると、色が薄れてくることもあるので、そのときはタトゥーで色味を補うこともできます」(岩平先生)

 3.乳輪乳頭が変形、変色しているときは切除し、再建
 「乳輪乳頭温存乳房切除術」は腫瘍が皮膚や乳頭乳輪に近い人には適さない術式です。がんの状態によっては切除部分が大きくなり、温存した乳輪乳頭が変形、変色してしまう場合があります。その場合は乳輪乳頭を切除し、新しく再建します。

 この日参加したMさんも主治医から「難しいかもしれない」と言われながらも乳輪乳頭を残してもらったが、壊死してしまい、落ち込んでいたところ、「岩平ゼミ」の告知を見て申し込みをしたといいます。

 「乳輪乳頭が再建できると知り、希望が持てました。先生の講義はとてもわかりやすく、参加して本当によかったです」(Mさん)

 乳輪乳頭の再建については、タトゥーや移植などを組み合わせ、様々な方法があります。「乳がん手術で失った乳頭・乳輪の再建〜E-BeCオンラインセミナーより〜( 1 )」では、メリット・デメリットをまとめているので参考にしてください。


岩平ゼミを主催する一般社団法人KSHSの代表理事・溝口綾子さん

乳房部分切除術(温存)をした人の乳輪乳頭の悩み

 乳房部分切除術(温存)の場合、がんの状態によって乳房が変形する、乳輪乳頭の位置がずれるという可能性があります。

 基本的な治し方は乳輪乳頭温存乳房切除術の場合と同じですが、温存術では、残された乳房内の再発を予防するために術後に放射線治療を行うため、皮膚の弾性線維が硬く変化します。つまりエキスパンダーを入れて皮膚を伸ばすことが難しくなるのです。

 「温存したものの、ふくらみがさみしい感じになってしまった人に、エキスパンダーを入れて皮膚を伸ばし、シリコンに入れ替えたという例はあります。放射線照射後でも保湿マッサージをし、皮膚が指でつまめるくらい柔らかい状態を保つことで、皮膚が裂けるといった合併症を減らすことはできます」(岩平先生)

【参考】
放射線療法を受けたら人工物での乳房再建はできないってホント?〜KSHS 第3回岩平ゼミ「乳房再建と放射線」から〜( 1 )

再建した胸を間近で見せてもらうことが、一歩を踏み出す力に

 講義の後に行われる、乳房再建体験者の胸を見せていただく体感会には、2人のモデルさんが協力してくれました。遠方から参加のモデルさんは、「私も再建前に体感会に参加して勇気をもらったので、次は私が披露する番です」と、コロナ禍にもかかわらず足を運んでくれました。

 最初は緊張と恥じらいの雰囲気から始まるものの、言葉を交わすうちに参加者さんもモデルさんも打ちとけて笑顔に。再建で悩む人の背中を押す大きな力となっています。


協力してくださった体感会のモデルさん、そして参加者のみなさんと記念撮影

 次回、第5回岩平ゼミはインプラントによる再建全般が対象で、12月18日に開催予定です。体感会も開催されますので、興味のある方は参加してみてはいかがでしょうか。

一般社団法人KSHS[キチンと手術・ホンネで再建の会]

医療法人社団ブレストサージャリークリニック

■取材
・文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。

(日本医療・健康情報研究所)

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