2021年09月22日

放射線療法を受けたら人工物での乳房再建はできないってホント?〜KSHS 第3回岩平ゼミ「乳房再建と放射線」から〜( 1 )

キーワード:乳房再建
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一般社団法人KSHSが主催する「岩平ゼミ」で講師を務める
ブレストサージャリークリニック院長・岩平佳子先生

 一般社団法人KSHS (キチンと手術・ホンネで再建の会)が主催する「人工物(シリコンインプラント)による乳房再建」がテーマの少人数セミナー「岩平ゼミ」。7月10日に開催された第3回のテーマは「乳房再建と放射線」でした。

 乳房に放射線照射を行う放射線療法は、乳がんの再発予防のために行われる治療ですが、「放射線療法を受けると人工物(シリコンインプラント)による乳房再建はできない」と言う医療者もいるため、乳房再建をあきらめてしまう人が少なくありません。

 「放射線療法を受けたけれど、乳房再建をしたいと考えている人」をはじめ、「乳房再建をした後に放射線療法を受けた人」「今後、放射線療法の予定の人」「放射線療法について悩んでいる人」に向けて、今回のセミナーは行われました。

 講師を務めるのはブレストサージャリークリニック院長で、1万件以上ものブレスト・インプラントによる再建の症例数を持つ、日本形成外科学会認定専門医の岩平佳子先生です。

乳がん治療で、放射線療法が必要となる場合

 乳がんの治療において、放射線療法は有効な治療法ですが、乳がんになったからといって必ずしも放射線療法を受けるわけではありません。

 乳房部分切除術(温存)では、がんのあった乳房を部分的に残すため再発防止のため、術後の放射線療法を行うことが標準治療として決められていますが、乳房切除術(全摘)では、再発のリスクが高いと考えられる場合に放射線療法を行います。

 具体的には、以下のような場合です。

1.乳房切除術(全摘):腫瘍の大きさが5cm以上、または腋窩リンパ節転移が4個以上の場合は術後に放射線照射を行う
2.乳房部分切除術(温存):残された乳房内の再発を予防するために必ず術後に放射線照射を行う
3.再発した際に、放射線照射を行うことが多い

放射線照射によって、皮膚に起こる変化が乳房再建を難しくする

 そして放射線を照射された皮膚には大きな変化が起こり、照射前の状態に戻ることはありません。

 放射線照射後の皮膚の特徴は、以下の3つです。

1.照射により皮脂腺、汗腺がダメージを受け、汗や脂が出なくなり、紙のようにボソボソ切れやすくなる
2.照射により弾性線維が硬くなり、伸びにくくなる。無理矢理伸ばすと切れる
3.照射により血行が悪くなり、皮膚がくっつきにくくなる


岩平先生が発表した論文から。
右は放射線照射をした皮膚の弾性線維、
左は放射線照射をしていない皮膚の弾性線維の電子顕微鏡像。
(上は500倍、下は1000倍に拡大)

 「左右とも同じ患者さんの乳房の皮膚です。全摘で放射線照射をしていない側の弾性線維(写真左)はくねくねとして密度がありますが、温存で放射線照射をした側の弾性線維(写真右)は、線維が細くて直線的、そしてボソボソと切れています。同じ人の乳房の皮膚ですが全然違います」(岩平先生)

 乳房再建(特に、手術から時間をおいて行う「2次再建」)では、エキスパンダーを乳房に入れて皮膚を伸ばす必要があり、「汗や脂が出ず、ボソボソとして切れやすい」「弾性線維が硬く、無理矢理伸ばすと切れる」「くっつきにくい」という照射後の皮膚では当然、難しくなります。

 「健側と同じ大きさまで膨らまないこともありますし、再建途中や再建後に皮膚が裂ける、もしくは穴があくという合併症の可能性もあります。しかし、だからといって放射線療法後に人工物による乳房再建ができないわけではありません」(岩平先生)

 続いて、放射線療法後の乳房再建において重要なこと、岩平先生が手術前に確認するポイントについて、ご紹介します。

一般社団法人KSHS[キチンと手術・ホンネで再建の会]

医療法人社団ブレストサージャリークリニック

■取材
・文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。

(日本医療・健康情報研究所)

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