リンパ浮腫の患者支援、治療環境の改善などに取り組む患者団体「リンパ浮腫ネットワークジャパン(通称・リンネット)」が、2021年3月に、がん治療の後遺症である「リンパ浮腫」で苦しむ人に有益な情報を提供する「リンネット Webサイト」を開設しました。これはリンパ浮腫に特化した日本初のポータルサイトになります。
・文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。
今記事では、リンネット の代表を務める岩澤玉青さんに、ポータルサイト「リンネット Webサイト」、そしてリンパ浮腫を取り巻く現状と課題などについて話をうかがいました。
「リンネット Webサイト」のトップ画面
訪れた人が必要な情報にアクセスしやすいよう、わかりやすい構成になっている
治療できる医療機関が限られ、情報も得にくい「リンパ浮腫」
乳がんや婦人科がん治療の後遺症で腕や足がむくむ「リンパ浮腫」。乳がん治療では、腋窩リンパ節(わきの下のリンパ節)に転移があるかどうかを調べるための検査「センチネルリンパ節生検」、腋窩リンパ節に転移がある場合に行う切除術「腋窩リンパ節郭清」、そして再発予防の目的などで行われる「放射線治療」が、「上肢リンパ浮腫」の主な原因です。
乳がんの術後ではおよそ30%の人が発症し、婦人科がん、前立腺がん、泌尿器がん、大腸がん、皮膚がんの治療後も含めてその患者数は20万人ともいわれています。
「リンパ浮腫」は、残念ながら現在の医療では完治が難しい疾患ですが、早期に発見し治療やケアを開始することで症状の改善や状態の維持が可能となります。
「そのためリンパ浮腫は早い段階で兆候に気づき、適切な治療を開始することが何より大切なのですが、患者がリンパ浮腫の知識や情報を得る機会が少ない、治療できる医療機関が限られる、統括する窓口もないため情報が散在しているといった理由から治療のタイミングを逃し、重症化してしまうケースが多いのが現状です」(リンネット ・岩澤代表)
リンパ浮腫に困ったら、まず必要となる基本情報を掲載
こうしたリンパ浮腫の現状を変えていきたいと、患者自らが立ち上がり2019年11月に設立されたのが、「リンパ浮腫ネットワークジャパン(通称・リンネット)」です。2021年3月には、ポータルサイト「リンネット Webサイト」を開設しました。
現在、「リンネット Webサイト」には、リンパ浮腫に困ったらまず必要になる基本情報が掲載されています。具体的には医師監修による「リンパ浮腫の基礎知識」、患者の視点にたった「リンパ浮腫のお役立ち情報」、「全国のリンパ浮腫セミナーやイベント情報」といったコンテンツです。
「リンネット Webサイト」内、「リンパ浮腫の基礎知識」の中にある
コラム「リンパ浮腫を早めに見つけるためのポイント」
今後ニーズに合わせて、コンテンツを順次拡充していくとのこと。今年度は、基礎知識に入れることのできなかった情報をQ&A形式で掲載し、ワード検索できるように整備するほか、要望の多いリンパ浮腫経験者の声や生活の知恵、弾性着衣などの紹介を加える予定だそうです。
「最終的には、リンパ浮腫治療が受けられる施設やドクターの情報についても、先生方と検討を重ね、紹介していければと思っています」(リンネット ・岩澤代表)
・「リンネット」Webサイト
■取材
・文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。
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