2021年04月21日

10年経ったら、インプラントの入れ替えって必要?〜KSHS第2回岩平ゼミ〜( 1 )

キーワード:乳房再建
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「岩平ゼミ」を主催する一般社団法人KSHS代表理事の溝口綾子さん

10年経過したら入れ替えることを学会は推奨、しかし入れ替えなければいけないわけではない

 一般社団法人KSHS (キチンと手術・ホンネで再建の会)が主催するシリコンインプラントによる乳房再建をテーマにした少人数セミナー「岩平ゼミ」。3月20日には、第2回として「乳房再建をしてから5年以上たった人」を対象に行われました。

 講師を務めるのはブレストサージャリークリニック院長で、1万件以上ものブレスト・インプラントによる再建の症例数を持つ、日本形成外科学会認定専門医の岩平佳子先生です。


岩平先生の講義を聴く参加者のみなさん

 乳腺外科医と形成外科医で構成されている「日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会」では、2013年のインプラントによる乳房再建の保険適用の際から、インプラントの破損や合併症の発見のために最低10年の定期的な診察と、2年に 1度の画像検査、さらに挿入期間が10年を越えたインプラントについては入れ替えることを推奨しています。

 インプラントを入れて長期経過している人はもちろんですが、BIA-ALCL(ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫)への不安といった理由からも、入れ替えを検討している人は少なくないでしょう。

 ※BIA-ALCL(ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫)の解説は、「乳房にエキスパンダーを入れたまま」では破損の恐れも ブレストサージャリークリニック・岩平佳子院長に聞くインプラント再建( 1 ) をご覧ください。

 ところで、10年経ったらインプラントは入れ替えなければいけないのでしょうか。岩平先生によると「入れ替えは学会による推奨であって、10年経ったら必ず入れ替えなければいけないということではない」と言います。

インプラントの入れ替えを検討するポイントは3つ

 岩平先生が院長を務めるブレストサージャリークリニックではインプラントを入れている期間にかかわらず、以下のような基準で入れ替えを勧めるかどうかを判断しています。

【インプラントの入れ替えを検討するポイント】 1.インプラントの破損の指摘
2.健側乳房の下垂、縮小
3.被膜拘縮Ⅲ度以上

 それでは1つずつ岩平先生の解説を紹介します。

1.インプラントの破損の指摘

 定期検診でMRIか超音波の検査をしたところ、インプラントの破損が疑われることがあります。当クリニックにもそうした人が来ましたが、実際に乳房から取り出すと破損はしていませんでした。ただし被膜拘縮が進んでいたため、インプラントがギュッと押し潰されていて、それが溝のように見えたことから破損と間違えたのかと思われます。

 この人は被膜拘縮がかなり進んでいたので、新しく入れ替えて「やわらかい乳房になってよかったね」という結果になったのですが、「被膜拘縮による変形を破損と判断した」という事例はかなり多くあるのが実情です。

 とはいえ、破損が起きないということはありません。実際に当クリニックにも乳房の表面に角が出ていて、痛みがある人が来ましたが、開けてみるとインプラントが裂けていました。

 この人はすぐに新しいインプラントに入れ換えましたが、現在、乳房再建に使われているインプラントはお菓子のグミのような素材で、切っても中身が流れ出てくることはない安全性の高いものなので急に体に影響が出るものではないですが、破損していたという例はあります。

2.健側乳房の下垂、縮小

 健側乳房が加齢によって大きく垂れてしまった人、またホルモン療法を長期間にわたり行ったため、健側乳房が萎んできてしまった人は、再建側の乳房とバランスが取れず、見た目に問題が出てくる場合も。インプラントを入れ替えて、左右のバランスを整えるという方法があります。

3.被膜拘縮Ⅲ度以上

 被膜とは体に異物が入った時、体を守るためにできるもので、悪いものではないのですが、乳房のインプラントに被膜ができると硬くなったり変形したりという事態が起こります。

※被膜拘縮とインプラントの関係についての解説は、 「乳房にエキスパンダーを入れたまま」では破損の恐れも ブレストサージャリークリニック・岩平佳子院長に聞くインプラントによる乳房再建( 2 )をご覧ください。

 被膜拘縮の進行度を表したベイカー分類というものがあり、Ⅲ度というのは明らかに位置が違う、インプラントのシリコンがギュッと圧迫されて硬くなっているなど、明らかに変形がある状態です。Ⅳ度は、Ⅲ度の状態で、常に痛みや圧迫感がある場合です。Ⅳ度なら、必ず手術したほうがいいでしょう。

 <ベイカー分類>
 Ⅰ:異物を入れた状態
 Ⅱ 多少硬い、多少縁が見える
 Ⅲ:明らかに変形がある、明らかに硬い、明らかに位置が違ってきた
 Ⅳ:Ⅲの状態で、常に圧迫感、痛みがある

 次回は、入れ替える時の選択肢について紹介します。

一般社団法人KSHS[キチンと手術・ホンネで再建の会]
医療法人社団ブレストサージャリークリニック

■取材
・文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。

(日本医療・健康情報研究所)

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