ブレストサージャリークリニック院長で形成外科医の岩平佳子先生
美しい乳房を作るのに大切なのは、インプラントの形よりもエキスパンダーの位置と量
「ラウンド型(おわん型)のインプラントは日本人の胸の形に合わないため、美しい乳房が作れない」という考えに対し、岩平先生は次のように話します。 「乳房=しずく型だと思っているため、そのほうが美しく仕上がるというイメージがあるのだと思いますが、実は美しい乳房を作るのに大切なのは、インプラントの形よりもエキスパンダーの位置と中に入れる生理食塩水の量、つまり皮膚の伸ばし具合です」(岩平先生) エキスパンダーの位置は、健側と左右対称が正しいですが、下のほうの皮膚をより伸ばす方がいいので、気持ち下くらいの場所がベストとのことです。 「指1本分よりも上に入っている場合は、まず左右対称にはなりません」(岩平先生) 量については、本来皮膚は縮もうとする性質があるので、ひとまわり大きめくらいが目標です。伸ばし方が足りないと被膜拘縮になりますし、皮膚を伸ばし過ぎればインプラントが回転してしまうこともあります。アナトミカルとラウンド型、どちらに向いているかは乳輪乳頭の位置で判断
シエントラ社のマイクロテクスチャードタイプのアナトミカル型インプラント
胸の形状に合わせて3種類から選ぶことができる
「乳房再建は不要不急?」コロナ禍で意識が10年前に逆戻り
診察や手術などで多忙な毎日にもかかわらず、積極的に医療関係者や乳がん患者に向けた講演活動をなさっている岩平先生に、その理由をうかがうと 「1年のうちに数回手術する先生はいても、私のように24時間乳房再建のことばかり考えているような人間がいないので、きっと呼んでくださるのでしょう。私の経験を伝える場があれば活かしていきたい。単なる町医者ですけれど、そういう部分は揺るがずにやっていきたいと考えています」 と、静かでありながら力強い言葉で答えてくれました。 そして、コロナ禍が始まって以来、治療の現場における乳房再建への意識が変化しているのを感じると言います。 「最近、患者さんから乳がんの治療はしても乳房再建の手術はしないと言われた、またはそういう雰囲気を感じたという話をよく聞くようになりました。『乳房再建は不要不急』といった方向に医療の現場が傾いてきてしまったのなら、これは大きな問題だと思います」(岩平先生) シリコンインプラントによる乳房再建セミナー「岩平ゼミ」を主催する一般社団法人KSHSの代表理事である溝口さんも「私たちがKSHSを立ち上げた約10年前に、乳房再建に対する意識が戻ってしまったように感じます。胸を張って前向きに生きていくために乳房再建は必要。乳がんになっても治療を選択し、納得して受けるためには正しい情報を得ることが大事です」と話します。
医療法人社団ブレストサージャリークリニック
http://www.iwahira.net
■取材
・文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。
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