2021年03月17日

「乳房にエキスパンダーを入れたまま」では破損の恐れも ブレストサージャリークリニック・岩平佳子院長に聞くインプラントによる乳房再建( 2 )

キーワード:乳房再建
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ブレストサージャリークリニック院長で形成外科医の岩平佳子先生

スムースタイプ・ラウンド型インプラントに対する誤解が、エキスパンダーの長期留置の一因に

 ここ数年、エキスパンダーを乳房に入れたままにしている人が増えている原因は、前回の記事で紹介したBIA-ALCL(ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫)の他にもあると岩平先生は言います。

 「それはスムース・ラウンドインプラントへの誤解、都市伝説です」(岩平先生)

 2019年7月のアラガン・クライシスによって、それまで保険適用だったテクスチャードタイプ(表面がザラザラしているタイプ)のアナトミカル型(しずく型)インプラントは使用できなくなり、2020年8月にシエントラ社のインプラントが承認されるまでは、スムースタイプのラウンド型インプラントしか使用できない状況になりました。

 ところがこの期間、スムースタイプのラウンド型ではなく、より良いインプラントの保険適用を待ちたいので、エキスパンダーを入れたままにするという人が少なからずいたのです。

 その理由は、
 ・スムースタイプ(表面がツルツルとしたタイプ)は、インプラントの周りにできる被膜が厚く硬くなり、乳房の皮膚が縮んで変形する『被膜拘縮』が起こりやすい
 ・ラウンド型(おわん型)は日本人の胸の形に合わないため、美しい乳房が作れない
 という考えです。

 これは形成外科医の間でも見解は分かれるところですが、結果として患者さんはスムースタイプのラウンド型のインプラントに不安を感じ、長期留置へとつながってしまったと思われます。しかし、岩平先生は、スムースタイプがテクスチャードタイプに比べて特に被膜拘縮が起こりやすいわけではなく、ラウンド型でも美しい乳房を作ることができると言います。

被膜拘縮の発症率、スムースタイプとテクスチャードタイプの違いは約2%


シエントラ社のスムースタイプのラウンド型インプラント(右)

 「まず被膜拘縮についてですが、インプラントを入れてから10年後の発症率は、スムースタイプが25.8%とテクスチャードタイプが23.7%という報告があります。確かにスムースタイプが高いですが、その違いはわずか2%です。そもそも被膜とは、体内に異物が入ったときに異物と一線を画すために体が作るもので、インプラントの種類で起こったり起きなかったりするものではないのです。この報告によれば、テクスチャードタイプでもスムースタイプでも、10年間経てば4分の1の人は発症します」(岩平先生)


10年経過後の被膜拘縮率
緑色がスムースタイプ、青色がテクスチャードタイプ

 発症しやすい人には次のような共通点があります。

 ・やせている、または乳がんの手術で脂肪をたくさん取っている
 ・術後に内出血があった
 ・術後に感染症があった
 ・血腫ができやすい
 ・放射線治療をした

 「2013年に保険適用となったインプラントは現在のものと比べてやわらかいシリコン使われていたのですが、現在はグミのような硬さのシリコンに改良されたことで、被膜拘縮はかなり減りました。またエキスパンダーの位置が上すぎる場合、インプラントの大きさに対して皮膚の伸ばし方が足りない場合にも被膜拘縮が起こりやすいことがわかっています」(岩平先生)

(つづく)

医療法人社団ブレストサージャリークリニック
http://www.iwahira.net

■取材
・文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。

(日本医療・健康情報研究所)

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