2021年03月16日

「乳房にエキスパンダーを入れたまま」では破損の恐れも ブレストサージャリークリニック・岩平佳子院長に聞くインプラント再建( 1 )

キーワード:乳房再建
  • twitterでつぶやく
  • 乳がん治療の情報ファイル


乳房の皮膚を伸ばすために入れるティッシュエキスパンダー(組織拡張器)

 乳房再建において、インプラントなどを入れる準備として乳房の皮膚を伸ばすために使うティッシュエキスパンダー(組織拡張器)。ここ数年、エキスパンダーを乳房に入れたままの状態にしている人が増えており、破損するケースも年々増加。乳房再建関連学会である「日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会」においても、この件について注意を喚起しています。

 こうしたエキスパンダーの長期留置の理由について、ブレストサージャリークリニック院長で、1万件以上ものブレスト・インプラントによる乳房再建の症例数を持つ、日本形成外科学会認定専門医の岩平佳子先生にうかがいました。

アラガン・クライシスとコロナ禍により、エキスパンダーの長期留置が増加


ブレストサージャリークリニック院長で形成外科医の岩平佳子先生

「エキスパンダーを乳房に留置したままにしている人がここ数年増えていますが、適切な期間は6ヶ月〜1年で、理想は8ヶ月。エキスパンダーは構造的に1年以上経つと、いつ壊れても不思議はありません。長期留置が増加している理由としてまず挙げられるのは2019年のアラガン・クライシスの影響、さらに2020年からのコロナ禍が加わってのことと考えられます」(岩平先生)

 アラガン・クライシスとは、2019年7月、アラガン社製のテクスチャードタイプ(表面がザラザラしているタイプ)のシリコンインプラントが、特殊なリンパ腫であるBIA-ALCL(ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫)の原因となっているとアメリカ食品医薬品局(FDA)が発表しました。すると時を置かずにアラガン・ジャパンは該当する製品を自主回収、そして日本で保険適用されていたエキスパンダーとインプラントが存在しなくなるという事態に陥りました。

 その3ヶ月後の、2019年10月にはBIA-ALCL のリスクが限りなく少ないとされるスムースタイプ(表面がツルツルとしたタイプ)のエキスパンダーと、同じくスムースタイプのラウンド型(おわん型)インプラント(ともにアラガン社製)が薬事承認を経て、保険適用となりました。

 そして2020年8月にはシエントラ社のスムースタイプのラウンド 型インプラントとマイクロテクスチャードタイプのラウンド型とアナトミカル型のインプラントが認可され、保険適用に。シエントラ社の『マイクロテクスチャードタイプ』は(表面がザラザラしているが凹凸が細かなタイプで、アラガン社のテクスチャードタイプよりもBIA-ALCL のリスクが少ないといわれています。


マイクロテクスチャードタイプのアナとミカル型インプラント(左)と
スムースタイプのラウンド型インプラント(右)[ともにシエントラ社製]

BIA-ALCLが怖くてエキスパンダーを入れたままに。「正しく怖がることが大切」

 まず岩平先生が指摘するのは、BIA-ALCLを怖がるあまり「インプラントに入れ替えず、エキスパンダーのままにしておけば安心」と長期間エキスパンダーを入れたままにする人が多くいるということです。「BIA-ALCLについて理解し、正しく怖がることが大切」と岩平先生は言います。

 BIA-ALCL について理解してほしいポイントは以下の3つ。
1.発症率が大変低いまれな病気
2.きちんと治療をすれば、予後が良い病気
3.1年に1回の検査を受けていれば問題はない

 まず1.については
「BIA-ALCLはインプラントが挿入されている人の約3800〜30000 人に1人が発症するとされ、国によって発生頻度の報告は大きく異なります。主に白人の豊胸手術をした人が多く、日本人の患者さんは17年前に乳房再建をした方が1名出たと2019年6月に発表されましたが、現在も変わらずこの方だけです。まずわかっていただきたいのは発症率が大変低いまれな病気なのです。乳がんが女性の9人に1人がかかる病気であることを考えれば、わかりやすいかと思います」(岩平先生)

 2.については
「早期であれば、治療法としては挿入されているインプラントを、インプラントの周囲に形成される被膜組織とともに外科手術で切除すれば終了です。現在、リコールとなったインプラントが入っていても、抜かなければならないというほどの緊急性はありません」(岩平先生)

 3.については
「症状もはっきりしています。ご自分の胸がパンパンに腫れてきたと感じた場合は、すぐに受診してください。腫れている原因のリンパ液を抜いて、病理検査に出すことで、BIA-ALCLかどうかがわかります。1年に1回、主治医のところで検査を受けていれば心配はいりません」(岩平先生)

 エキスパンダーを乳房に入れたままにするのは、破損のリスクを考えれば決して良い選択とはいえません。6ヶ月〜1年たったらインプラントに入れ替えること。そして、もし1年以上たっている場合は、すぐに入れ替える必要があります。

(つづく)

医療法人社団ブレストサージャリークリニック
http://www.iwahira.net

■取材
・文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。

(日本医療・健康情報研究所)

関連ニュース・トピックス

ニュース・キーワード

ニュース・トピックス
イベント・セミナー情報
09月24日(金) オンライン
患者さん・一般の方向け
オンライン「リラクセーション」
09月25日(土) 東京都
患者さん・一般の方向け
ういケアみなと がんと生活のセミナー 感染症に負けない栄養管理
09月25日(土) 神奈川県
患者さん・一般の方向け
医師・医療スタッフ・保健師向け
無料 下着出張相談会・試着会in海老名
09月25日(土) 東京都
患者さん・一般の方向け
ういケアみなと がんと生活のセミナー 感染症に負けない栄養管理
09月25日(土) オンライン
患者さん・一般の方向け
ピンクリング WEBおしゃべり会2021 フリートーク
オピニオン
がんと就労~本人と職場を支える産業看護職のより良い支援とは~
錦戸 典子(東海大学大学院健康科学研究科)
病気になっても仕事を続けるための支援
荒木 葉子(荒木労働衛生コンサルタント事務所)
乳がんとともに生きる人を理解する
青木 美保(帝京大学医学部附属病院 帝京がんセンター 認定遺伝カウンセラー)
キチンと手術・ホンネで再建(KSHS)~乳がんぶっちゃけ話~
溝口 綾子(一般社団法人KSHS 代表 )
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)のいまとこれから
中村 清吾(昭和大学医学部 外科学講座乳腺外科学部門教授、 昭和大学病院ブレストセンター長)
がん治療を楽にする口腔ケア
百合草 健圭志(静岡県立がんセンター 歯科口腔外科部長)
「がんと就労」広がる病院内での就労相談
近藤明美 (近藤社会保険労務士事務所)
がん治療と仕事の「両立支援」を考える~産業保健師の乳がん経験~
横山 淳子(パナソニック健康保険組合 保健師 )
トップページ 治療と乳房再建 イベント・セミナー情報 ニュース・トピックス オピニオン リリース情報 このサイトについて お問い合わせ