
新型コロナウイルス感染症が流行により、増えつつあるオンラインのイベント。「やってみたい」と思いながらも躊躇している主催者、そして「参加してみたい」と感じながらもどことなく不安を感じているサバイバーもまだ多いようです。
コロナウイルスがまだ流行する前の2019年11月から、オンライン型のイベントを開催してきた「若年性乳がんサポートコミュニティ Pink Ring®」事務局の吉川春菜さんに、実際に集まる会とオンラインの会との違いや、有意義な会にするための工夫など、オンラインイベント成功の秘訣についてうかがいました。
対面でのイベントとの違い オンラインの会だからこそ向いている内容も
―――――これまで開催した「WEB おしゃべり会」を通して感じた、対面でのイベントとオンラインの会との違いを教えてください。
吉川(以下敬称略):『対面でのイベント参加者のほとんどは近郊にお住まいの方ですが、オンラインの会の場合は全国各地、ときに海外からもご参加いただけることが一番の違いかと。また、治療に伴う副作用や感染リスクの恐れ、そして外見の変化によって外出をためらう方にも安心してご参加いただける環境を提供できると思っています。
オンラインの会は、WEB会議ツール「Zoom」の機能上、複数人が同時に話したり相槌を打ったりすることは難しいのですが、ひとりひとりのエピソードをじっくりと伺ったり、対面では難しいピンポイントなテーマについて掘り下げたりすることには向いていると感じます。』
―――――これまでの会で、特に印象に残っているエピソードを教えてください。
吉川:『日本人の同じ病気の方と話をする機会がなかった海外在住のサバイバーさんが「いつかPink Ring®のおしゃべり会に参加して若年性乳がんの仲間とお話ししたい」と思っていたところ、「WEB おしゃべり会」を見つけてくれて、「これなら」と参加してくれました。
海外での闘病に不安や孤独を感じている方も多くいらっしゃると思いますので、そういった方々の元にも情報を届け、世界の仲間とつながる機会になったらうれしいです』
―――――オンラインの会を行う上で、特に工夫なさっていることを教えてください。
吉川:『参加者のプライバシーとイベントの開催環境を守るため、不特定多数の方が閲覧できるような場所を避け、ご自宅など静かなところでご参加いただくようにお願いしています。また、みなさんが安心してご参加できるよう、お顔出しは必須としています。
さらに画面を通じての会話をスムーズに行っていただけるよう、当会から2名以上のファシリテーターが参加しています。画面からは表情や共感が伝わりにくいので、ファシリテーターは対面イベントよりも大きくうなずき、笑顔を心掛けるようにしています。』
―――――新型コロナウイルス感染症が流行している中、不安な気持ちで過ごしているがん患者さん、サバイバーさんに向けてメッセージをお願いします。
吉川:『 Pink Ring®では、新型コロナウイルス感染の収束が見られるまで、直接お会いする形でのイベントを自粛しております。しかしながら、このような状況の中、治療のこと、通院のこと、手術のことなど特有の悩みや不安を抱えている方は多いと思われます。
私たちはみなさんと同じ若年性乳がん体験者の立場なので、医療に関わる直接的な情報は伝えられませんが、悩みを共有すること、また正しい情報にたどり着くためのお手伝いはできると考えています。
現在、「WEBおしゃべり会」をはじめとするオンラインでのセミナー開催や、今までスタジオで行ってきたキャンサーヨガをオンラインで参加いただけるよう企画中です。新型コロナウイルスの1日も早い収束を願ってやみませんが、今だからできることを丁寧に、みなさんとあたたかい時間を共有したいと思います。』
「がんの経験を勲章に」の想いを込めて作ったという「Pink Rosette®(ピンクロゼット)」
Pink Ring® WEBおしゃべり会 特別企画!
「セルフストレスケアマネジメント」~コロナ禍の不安や疲れをふきとばせ!みなさんはどんな風にストレス解消していますか?~
日時:2020年4月29日(祝・水)10:00~12:00
『WEBおしゃべり会の無料モニター回は終了しましたが、緊急事態宣言という状況を鑑み、無料でご参加頂ける特別企画を新たに用意しました。
これまでのWEBおしゃべり会はフリートークが中心でしたが、今回は病気と向き合いながらコロナストレスに対して、キャリアカウンセラーの方によるワーク「自分の元気度のセルフモニター」と、ストレスに関するミニセミナーを行います。ワークやおしゃべりを通して、自宅待機のストレスを少しでも解消してもらえればと考えています』(吉川さん)
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若年性乳がんサポートコミュニティ Pink Ring
■取材・文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。