
登壇したがん・感染症センター都立駒込病院
形成再建外科部長・寺尾保信先生
2019年8月に開催された「ジャパンキャンサーフォーラム2019」(主催・運営:認定NPO法人キャンサーネットジャパン)において、がん・感染症センター都立駒込病院 形成再建外科部長・寺尾保信先生による講演「乳房再建 〜乳がん治療の選択肢としての乳房再建:ここまでできる!」(共催・NPO法人エンパワリング ブレストキャンサー)が行われました。
この記事では、講演の中で紹介されたブレスト・インプラント(人工乳房)による乳房再建手術を受けた方に向けての情報をお伝えします。
インプラントを入れて5年以上経過している方は毎年受診・検査を
米食品医薬品局(FDA)が2019年7月、日本で唯一保険適用が認められているアラガン社のテクスチャード加工ブレスト・インプラントが「ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)」の原因となっていると発表したことを受け、ブレスト・インプラント(人工乳房)による乳房再建手術を受けた方の間で、大きな不安の声が聞かれます。今後、いったいどのように対応すればよいか、寺尾先生からお話がありました。
「日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会が発表した内容にもあるように、無症状の患者さんに対する予防的なインプラントの摘出は推奨していません。また保険適用後に手術を受けた方には『インプラントの破損や合併症の発見のために、最低10年の定期的な診察と2年に1度の画像検査を推奨』とお伝えしていると思いますが、インプラントが入っている限りはずっと定期的な診察を受けていただきたいですし、入れてから間もないうちは2年に1度でもよいですが、5年以上経過している方やわずかでも漿液腫ができている方はぜひ毎年診察を受けてください」(寺尾先生)
検査方法については「基本的には超音波でよいと思いますが、何か気になる点があればMRIを受けていただきたい。また『自己検診の継続を』と学会が発表した内容にありましたが、どのように自己検診をすればよいかという情報がまだ無いので、変化があればすぐに病院に来ていただきたいです」(寺尾先生)
また、交換については「これは学会が発表した内容には無かったのですが、私は大事だと思うので付け加えます。10年越えたら入れ替えてください。BIA-ALCLが平均10年くらいで発症するということは、計算上では10年で交換すれば発症する人が半分になりますから」(寺尾先生)
さらにインプラントによる乳房再建が保険適用になる2013年7月以前に、アラガン社でないインプラントを入れた方に向けては「保険適用になる前、駒込病院では、メンターという会社のインプラントを使用していました。このメンター社のものはアラガン社よりもリスクは低いのですが、検査や交換については同じように対応していただきたい」
また、保険適用前に自費でアラガン社のインプラントを入れた方に対しては「病院に通っていない方もいるかもしれないので、まずは急いで検査を受けていただきたい」と今後の対応をすすめました。
保険適用後に手術を受けている方へ
<検査>
・インプラントが入っている限りはずっと定期的な診察を受けたほうがよい
・入れてから間もないうちは2年に1度でもよいが、5年以上経過したら毎年受診を
・検査方法は、基本的には超音波。気になる点があればMRIで
<交換>
・インプラントは10年過ぎたら交換を
保険適用前に手術を受けている方へ
・他社のリスクが低いインプラントを入れている方も、念のため「保険適用後に手術を受けている方」と同様の対応を
・保険適用前に自費でアラガン社のインプラントを入れた方は、至急検査を
認定NPO法人キャンサーネットジャパン
NPO法人エンパワリング ブレストキャンサー
■取材・文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。
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