
医師が登壇し、トリプルネガティブ乳がんの概要、治療法などを教えてくれる。
――――――――がん細胞にホルモン受容体、HER2のどちらも存在しない「トリプルネガティブ乳がん」は乳がん患者の約10%を占めています。トリプルネガティブ乳がんに特化した患者会「ふくろうの会」は、トリプルネガティブ乳がん患者の有志によって2016年1月に設立されました。
日本医科大学付属病院乳腺科の医師で、「ふくろうの会」の創立メンバーである、副代表の金丸里奈さんに「ふくろうの会」設立のきっかけ、会の活動についてお話をうかがいました。
励ましあってきた仲間の転移再発をきっかけに
トリプルネガティブ乳がん患者は、乳がんの中でも数が少ないので、患者同士はインターネットで知り合うことが多く、金丸さんが代表の福原宏美さんと知り合ったのも、ブログを通じてのことでした。
福原さんが同じ時期に治療をし、励ましあってきた友人が転移再発したことをきっかけに、主治医の谷野裕一先生(神戸大学医学部付属病院)に相談をしたところ、トリプルネガティブ乳がんの患者会を立ち上げることを決意したそうです。
当時、福原さんが立ち上げていたアメーバのコミュニティサービス「トリネガールの会」の仲間のうち、金丸さんをはじめとする患者会を一緒に立ち上げる人に声をかけ、「ふくろうの会」がはじまりました。乳がんにはたくさんの患者会がありますが、トリプルネガティブ乳がんに特化した患者会は、これまでありませんでした。
登録している会員は現在130名、これまでのべ220名以上の方が入会したそうです。
「治療中に入会する方が多いですが、再発の可能性が少なくなる3年を経過すると退会する人もいます。あと再発をきっかけに入会される方もいますね」(金丸さん)
年に数回、各地で医師を招いての本格的な勉強会(会員以外も参加可)に加え、会員懇親会も開催。2019年は4月14日に「トリプルネガティブ乳がんフォーラム 2019」を開催する予定です。
「がんばってフォーラムの会費は無料にしました。患者さんのご家族や友人にも参加していただき、トリプルネガティブ乳がんの存在を知っていただき、『ふくろうの会』や医療者の方々の活動にふれていただくいい機会になればと思います」(金丸さん)
情報が少ないことで、余計に不安な気持ちに
「ふくろうの会」の活動の目的は、以下の3点です。
1. トリプルネガティブ乳がんの正しい情報の発信
2. 患者同士の交流
3. 新薬・適用外薬を含めたトリプルネガティブ乳がんの予後を改善するための活動
1については、トリプルネガティブ乳がんについての情報が大変少ないため、会の立ち上げから急務だと感じ、WEBサイトでの発信のほか、勉強会、会報の発行などに取り組んできたといいます。さらに代表の福原さんは医療者や医学部の学生に向けての講演活動も行っています。
「インターネットで検索してみても、出てくるのはルミナルタイプの情報ばかりで、トリプルネガティブ乳がんについては、あってもほんの少しの記述で、最後には『予後不良』と書かれている。
また他の乳がん患者会に参加しても、トリプルネガティブ乳がん患者さんに出会える確率は少なく、他のサブタイプとは治療法、再発率などが大きく異なるので共有できる情報が少ない。
不安を抱いている患者さんに正しい情報をしっかりと伝え、少しでも気持ちをやわらげたいですね」(金丸さん)
転移再発の方のブログなどを見て、不安をふくらませてしまうトリプルネガティブ乳がん患者さんがいることにもふれ「私もそうですが、代表の福原も治療を乗り越えて再発せず5年以上活動をしており、この病気の多くの方が転移再発せず過ごしています。
また、転移再発している方でも、お仕事や子育てをしながら前向きに治療されている患者さんも沢山おられます。そういうことも知ってもらいたい。」と話してくれました。
また、トリプルネガティブ乳がんは手術、放射線の治療は一緒ですが、薬物療法が抗がん剤のみなので、他のサブタイプに比べて早く無治療になります。そのことに対して不安を感じている患者さんが多くいるといいます。
「何かできることはないかと情報を探している人が多いのですが、そうした方のためにも、WEBサイトの治験情報を提供しています。
今後は各機関が協力して、より多くの人が臨床試験に参加しやすくなるようなシステム、またご自身で検索してエントリーできるようなシステムができればいいなと考えています。そのために、患者会として何かできることはないか、みんなで考えていこうと思っています」(金丸さん)
■トリプルネガティブ乳がん患者会 ふくろうの会
「トリプルネガティブ乳がんフォーラム 2019」
〜救える命を増やしたい! 私たち患者ができることは何か、今とこれからを考える〜
〇2019年4月14日(日)13:00〜16:00 東京ウィメンズプラザホール
参加費無料

■文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。
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