
トリプルネガティブ乳がん患者会「ふくろうの会」のWEBサイト。
トリプルネガティブ乳がんについての解説をはじめ
勉強会などのイベント、治験の情報もある
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―――――――― がん細胞にホルモン受容体、HER2のどちらも存在しない「トリプルネガティブ乳がん」。乳がん患者のうち約10%を占めています。 情報が比較的少なく、同じ乳がん患者にもあまり知られていない「トリプルネガティブ乳がん」について、日本医科大学付属病院乳腺科の医師で、トリプルネガティブ乳がん患者会「ふくろうの会」の副代表である金丸里奈さんにお話をうかがいました。
抗がん剤が効きやすく、3年を超えての再発が少ない
トリプルネガティブ乳がんには、他のサブタイプとは違う特徴がいくつかあります。 ・他のタイプと比べて、抗がん剤が効きやすい増殖能力が高いことがトリプルネガティブ乳がんの特徴ですが、抗がん剤は増殖のスピードが早いものを攻撃するので、抗がん剤がよく効きます。しかし、トリプルネガティブ乳がんの中にも、抗がん剤が効きにくいタイプのものがあります。 ・3年以内の再発率は高いが、3年を超えると再発率が低くなる
ただし他のサブタイプの乳がんに比べて再発率が高いトリプルネガティブ乳がんですが、再発する場合は3年以内と早いことが特徴で、3年を超えたらあまり再発しませんし、5年経てば安心といわれています。 例えばルミナルタイプでは10年以上たっても再発することはあり、その点は多く異なります。また転移再発した場合、生存期間の中央値は7ヶ月で、10年以上の人も多いルミナルタイプと比べると短いです。 ・若年性乳がん患者の多くが、トリプルネガティブ乳がん
トリプルネガティブ乳がんは若い人に多く、20代の乳がん患者さんの多くがトリプルネガティブです。また増殖能力が高いことに加えて、乳がん検診の対象年齢よりも低い年齢での発症が他のタイプに比べて多いため、自分でしこりを自覚してがんがわかるケースが多いのも特徴です。そのため、早期よりもステージ2以上で見つかることが多いです。 またトリプルネガティブ乳がんは増殖能力が高いので2年に1度の検診の間に見つかる(中間期乳がん)ことも多くありますし、妊娠期、授乳期に見つかるものもトリプルネガティブ乳がんであることが多いです。
「私も授乳期乳がんでした。授乳期にはしこりがあると思っても『乳瘤』としてすまされてしまうことが多いので、かなり進行してから発見されるケースもあります」(金丸さん)
トリプルネガティブ乳がんは、さらにいくつかのサブタイプに分かれる
また最近の研究では、トリプルネガティブ乳がんはさらに様々なサブタイプに分類されることが報告されており、サブタイプごとに治療効果の期待できる薬剤があることが示されています。 トリプルネガティブ乳がんの患者数が少ないことなどから、研究、開発がなかなか進まないのが現状ですが、今後は、トリプルネガティブ乳がんの明確かつ簡便なサブタイプ分類の検査法を確立し、サブタイプごとに有効性が期待される薬剤を用いた臨床試験の実施が求められています。 <トリプルネガティブ乳がんのサブタイプ>マイクロアレイ法という検査法を用いて、癌細胞の遺伝子を調べ、その特徴によって以下の7つに分類した報告があります。この方法は煩雑で費用も高額であり、通常、一般診療では行っていません。 ・basal-like1(BL1)サブタイプ
・basal-like2(BL2)サブタイプ
→細胞増殖能が極めて高い。遺伝性乳がんの原因遺伝子のひとつBRCA1の変異を持つ人に発生する乳がん(BRCA1関連乳がん)の80~90%は、BLに分類される。
→BL1は抗がん剤がよく効く。アルキル化剤、白金製剤が効く。
→BL2は抗がん剤の効きが悪い。
・immunomodulatory(IM)サブタイプ
→免疫反応が高く、免疫チェックポイント阻害剤が効く。 ・mesenchymal (M)サブタイプ
→抗がん剤の効きが悪い。肉腫系の細胞に移行しやすい。チロシンキナーゼ阻害薬、m-TORが効く。 ・mesenchymal-stem like(MSL)サブタイプ
→増殖能が低い。転移を起こしにくい。 ・luminal androgen receptor(LAR)サブタイプ
→アンドロゲン受容体(男性ホルモン)やluminal関連遺伝子が高発現。
→前立腺がんの薬が効く ・Unstable(UNS)
→上記どれにも分類できないもの。 ■文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。
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