政府は「第3期がん対策推進基本計画」を閣議決定した。がんによる死亡率を下げるために予防と検診体制を強化することなどを盛り込み、がん検診受診率を50%に引き上げるなど、多くの具体的目標を定めている。
(1)がん死亡率を下げるために予防と検診体制を強化する。
(2)がん検診の受診率を、現在の30~40%から50%に引き上げ、がん罹患の疑いがある場合の精密検査受診率を現在の65~85%から90%に引き上げる。
(3)個々の患者に最適医療を提供するための「がんゲノム医療」を推進する。
(4)患者の入院、通院時の療養生活を支える「チーム医療」の体制を強化する。
(5)高齢患者に適した診療ガイドラインを策定してがん治療拠点病院などに普及する。
(6)治療と仕事を両立させるために医療機関が企業と連携するためのマニュアルを3年以内に作成し、普及を開始する。
目標受診率 がん検診は50%、精密検査は90%に
日本のがん対策はおおむね5年を1期とする「がん対策推進基本計画」にもとづき進められており、これまで第1期(2007~11年度)、第2期(2012~16年度)の計画が進められてきた。 3期目の基本計画は、2017年度から22年度までのがん対策の方向性を示すもので、「予防」「医療の充実」「がんとの共生」の3つを柱として掲げている。基本計画を受け各都道府県が地域の実態に合わせた計画を作ることになっている。 多くの重点分野で具体的な目標を明示している――(1)がん死亡率を下げるために予防と検診体制を強化する。
(2)がん検診の受診率を、現在の30~40%から50%に引き上げ、がん罹患の疑いがある場合の精密検査受診率を現在の65~85%から90%に引き上げる。
(3)個々の患者に最適医療を提供するための「がんゲノム医療」を推進する。
(4)患者の入院、通院時の療養生活を支える「チーム医療」の体制を強化する。
(5)高齢患者に適した診療ガイドラインを策定してがん治療拠点病院などに普及する。
(6)治療と仕事を両立させるために医療機関が企業と連携するためのマニュアルを3年以内に作成し、普及を開始する。

ゲノム医療の推進や希少・難治がん対策なども打ち出す
がん予防では、たばこ対策や肝炎ウイルスなどの感染症対策などに取り組む。検診でがんの疑いがあった場合に受ける精密検査の受診率を引き上げ、重症化やがんによる死亡者の減少につなげる。 医療の充実では、どこに住んでいても必要な「ゲノム医療」をがん患者が受けられる体制を段階的に整備する。 具体的には、▽ゲノム医療を牽引する高度な機能をもつ医療機関(がんゲノム医療中核拠点病院)の整備、▽質と効率性の確保されたゲノム解析機関や、ゲノム解析結果を解釈する際の基礎情報となる「がんゲノム知識データベース」を構築するための基盤を整備、▽遺伝子関連検査(遺伝子パネル検査など)の制度上の位置づけなどを検討----などの方針が示されている。 また、「手術療法などの充実」に関しては、がん診療拠点病院などの格差を解消するために「診療実績数などを用いた他医療機関との比較」「第三者による医療機関の評価」「医療機関間での定期的な実地調査の実施」などを検討する。 手術療法については、患者の身体への負担が少ない療法を普及させるほか、治療が難しい一部の希少がんや難治性がんの患者らを集約化する仕組みの構築を目指す。 放射線療法では、現在は限られたがん種について保険適用とされているが、有効性・安全性や費用対効果を検証しながら、より効率的な利用を進めていく。高度な療法について都道府県を越えた連携体制や必要な人材の育成も必要となる。 薬物療法に関しては、外来患者への服薬管理や副作用対策を支援するため、かかりつけ機能を有する地域の医療機関・薬局と拠点病院との連携強化に向けた施策を講じる。がんとの共生 がん患者が尊厳を守りながら生活できる社会を
「がんとの共生」については、2016年の改正がん対策基本法で「がん患者が尊厳を保持しつつ安心して暮らすことのできる社会の構築を目指す」と定められた。 がん患者が、適切ながん医療のみならず、福祉的支援、教育的支援その他の必要な支援を受けることができるようにするため、がん患者が円滑な社会生活を営むことができる社会環境の整備が求められている。 がん拠点病院で、治療の早期から患者ががん相談支援センターを利用できるよう「拠点病院の整備指針に反映」することを検討する。社会保険労務士などの院外の支援に関する専門家との連携も強化する。 がんによって、個々のライフステージごとに、異なった身体的問題、精神心理的問題及び社会的問題が生じることから、小児・思春期・若年成人や高齢者のがん対策なども含めた「ライフステージに応じたがん対策」を講じていく必要もある。受動喫煙対策はトーンダウン
なお、がん予防に大きく関わる受動喫煙の目標値については、受動喫煙対策を飲食店などに義務付ける健康増進法改正案の国会への提出のめどがついていないことから、基本計画に盛り込まなかった。 第3期がん対策推進基本計画をまとめる過程で厚労省は「受動喫煙の機会を有する人の割合を、2020年までに職場や飲食店、家庭などのすべてでゼロにする」との目標も盛り込むことを目指した。 しかし、計画には目標値は盛り込まれておらず、概要で「受動喫煙対策に係る法案を踏まえて別途閣議決定する予定」と記載されるにとどまっている。 「がん対策推進基本計画」の変更について(厚生労働省 2017年10月24日)関連ニュース・トピックス
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