がん患者の抱える「お金の悩み」をサポート! 聖路加国際病院「おさいふRing」
がん患者の人が直面するお金の問題をサポートする聖路加国際病院の「おさいふRing」で、ファシリテーターを務めるファイナンシャルプランナーの黒田尚子さん、社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの豊島絵理子さん、聖路加国際病院相談支援センターの看護師、橋本久美子さん。
第2回では、実際にがん治療とお金の問題にどう対処したらいいのか、お三方にさらにアドバイスをいただきました。
病気になっても、安易に仕事を辞めないこと
がん治療とお金の問題というと、手術代や薬物療法の費用、入院費や通院費、検査費用といった「治療で出て行くお金」がどうしても気になりますが、収入の確保も大事です。そのために大切なのは、安易に仕事を辞めないことだといいます。 「乳がんは40代の働き盛りの方がかかりやすいのですが、病気になったからといって仕事を辞めてしまうと、本当は一番貯めなければいけない時期に全く貯蓄ができなくなることになります。
もちろん病状によっては、治療と仕事の両立が難しい場合もありますが、『やめなくちゃ』と頭から思い込まず、両立ができないかどうかを、お医者さんとよく話しあって、道を探ることが大切です」(黒田さん)
現在、経済的な理由で、治療を断念する人も少なくありませんが、医療費以外の支出、たとえば住宅ローンなど家計のさまざまな支出を見直してみたら、治療が継続できたということもあるそうです。
さらにご自身が契約している民間保険や特約などの内容を改めて確認したり、公的制度をしっかり活用したりすることも忘れてはいけません。
経済的な事情も含めて、治療プランを考える時代に
病院でお金の話をすることは憚られるという人がまだまだ多いですが、「もはや、そういう時代ではない」と、黒田さん、橋本さん、豊島さんは口を揃えます。「経済的な理由で患者さんが治療を断念されるのは、病院にとっても大きな問題です。
患者さんに長く治療を続けてもらうためには、もっとお金のことを遠慮なくたずねられる状況を作らなければと、病院側は考えています。最近は概算でいくらかかるか教えてほしいと聞いてくる方も多いですが、金額をお伝えすると安心する方も多いです。
お金の事情や、家の事情、人生設計などを全部含めて、医療者に治療プランを相談できる時代になってきたんです」(橋本さん)
「最近の薬は高額なものも多く、患者さんの負担はとても大きくなっています。お医者さんから提示された治療プランだと、お金が続くなくなりそうと思ったら、恥ずかしがらずに伝えて、高額ではない別のプランを提案してもらいましょう。
もし治療を途中でやめなければいけなくなると、お医者さんもどうしていいのかわからなくなりますし、なによりご本人が大変ですから」(豊島さん)
「都心部と違い、地方ではなかなか病院を選べないという現状もありますが、治療やお金のことで不安に感じたら、病院の相談室などには、看護師や医療ソーシャルワーカーの方もいます。また、全国には私と同じCFP®認定者の資格を有するファイナンシャルプランナーが2万人以上います。
医療機関によっては、おさいふRingのような活動を知っていただければ、取り入れてもらえることもあるかと思いますので、患者さんのほうがまず『この病院はファイナンシャルプランナーがいないんですか?』と、ぜひ声をあげてみてください」と黒田さん。
お金の問題を口するのは決して恥ずかしいことではないので、ひとりで不安を抱え込まず、がん相談支援センターや病院の窓口、あるいは身近な医療者などに早めに相談することをおすすめします。
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