医療保険の補償範囲や自宅から病院への通院距離が、乳房切除を行った乳がん患者が乳房再建術を受けるかどうかの選択に影響を及ぼすことが、新しい研究で示された。
この研究で、米ノースカロライナ大学チャペルヒル校の研究者らは、ノースカロライナ州で2003~2006年に乳がんと診断され、診断から6カ月以内に乳房切除術を受けた5,300人強の女性患者のデータを解析した。
解析の結果、対象患者の約2割が乳房再建術を受けていたが、民間の医療保険に加入している女性に比べて、米国の公的医療保険制度であるメディケアの受給者では乳房再建術の施行率は42%低く、メディケイド受給者では76%低いことがわかった。
また、自宅から形成外科までの距離が16km以内の女性に比べて、16~32km圏内の女性が乳房再建術を受ける確率は22%低く、32km以上離れた場所に住む女性では27%低いことも判明した。白人に比べてマイノリティの女性は乳房再建術を受ける率は半減していた。
さらに、これまで行われた研究と同様に、今回の研究でも、高年齢であることや進行したがん、放射線治療歴も乳房再建術を妨げる要因であることもわかった。
筆頭著者である同校形成外科助教授のMichelle Roughton氏は、「乳がんは患者の身体面だけでなく、精神的な健康にも影響を及ぼすことがわかっており、乳房再建はこうした問題の解決に重要な役割を担っている。今回の知見は、乳房再建術の実施を妨げる障壁は、これまで考えられていたよりも多いということを裏づけるものだ」と述べている。
この知見は、「Plastic and Reconstructive Surgery」8月号に掲載された。
記事原文 [HealthDay News 2016年8月2日]
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(参考情報) 論文アブストラクト
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