医療現場で存在感増す「乳がん看護認定看護師」とは
「乳がん看護認定看護師」は、日本看護協会によって、乳がん治療の領域で熟練した看護技術と知識を有すると認められた看護師です。乳がんの罹患率が高まる中、ますますその役割が注目されています。全国のがん診療連携拠点病院を始め、さまざまな医療施設の乳がん治療の現場で活躍をしている頼れる存在です。
乳がんのほか、21分野に広がる認定看護師制度
乳がん看護認定看護師は、「認定看護師制度」の分野のひとつ。高度化と専門分化が進む医療の現場において、水準の高い看護が実践できる人材の育成を目的に「認定看護師制度」は1995年に発足し、乳がんのほか感染管理や皮膚・排泄ケア、緩和ケア、がん化学療法看護など、21分野に広がっています(2016年1月現在)。
認定看護師になるためには、まず看護師として5年以上の実務経験を持つことが条件。日本看護協会が定める615時間以上の認定看護師教育を修め、認定看護師認定審査に合格することで取得できます。
また、審査合格後も5年ごとに更新審査が行われ、認定看護師にふさわしい看護レベルを保持しているかを問われます。水準の高い看護の実践のみならず、看護に関わるほかの看護師たちへの指導を行うことで、看護現場の質の向上に対しても役割を果たすことが求められている存在でもあります。
治療方法を選択する際のサポートも
乳がん看護の分野については、2006年から認定が開始され、2016年5月現在では282名の認定看護師が登録。乳がん治療や看護に関する専門知識や経験を活かして、乳がん患者やその家族に対して必要なサポートを行っています。
具体的な役割のひとつとして、治療方法を選択する際の支援が挙げられます。乳がんの治療は手術、薬物療法、放射線療法といったさまざまな方法を組み合わせて行われるため、患者自身が治療法を理解して選択しなければいけません。がん告知後の不安定な心理状況も踏まえて、アドバイスやサポートをしてくれる存在は、患者にとって心強いに違いありません。
ほかにも、乳房切除や化学療法の副作用による脱毛など、ボディイメージの変容による心理的なサポート、術後のリンパ浮腫予防へのアドバイスなどその役割は多岐に渡ります。
2016年5月12日現在、乳がん看護認定看護師はがん診療連携拠点病院の約38%、特定機能病院の約48%で勤務。病院に勤務している263名のうち、57.0%は病棟で、35.4%は外来に所属をしています。
所属 | 施設数 ※ | 所属施設数 | 人数 |
---|---|---|---|
特定機能病院 | 86 | 41 | 47 |
がん診療連携拠点病院 | 407 | 154 | 177 |
救命救急センター | 271 | 93 | 105 |
認定看護師 乳がん看護分野 特定機能病院・がん診療連携拠点病院・救命救急センター勤務者(延べ数) [2016年5月12日現在]
※特定機能病院承認状況(2013年4月)
がん診療連携拠点病院指定一覧(2014年8月)
救急医療施設等設置状況(2014年7月)
[2016年5月12日現在]
[2016年5月12日現在] ■取材・文/瀬田尚子 出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。
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