これまで乳房再建は、自家組織(皮弁法)による再建のみが健康保険の適用だったが、2013年7月からはインプラントによる乳房再建も保険適用となった。
しかし、2014年5月にアラガン・ジャパン株式会社によって行われた調査では、乳房再建に保険適用されることを知るのはわずか3%と極めて低いことが明らかになった。
2013年7月からインプラントも保険適用
日本で初めて健康保険の適用となったのは自家組織(皮弁法)による乳房再建で、2006年だった。さらに2013年の7月にはラウンド型シリコンインプラントとティッシュ・エキスパンダー(皮膚拡張器)の保険適用が開始され、2014年1月からはより自然な形状を持つアナトミカル型シリコンインプラントの適用も始まった。しかし、2014年5月にアラガン・ジャパン株式会社によって行われた、乳がんと乳房再建に関する意識調査の結果、乳房再建の保険適用についての認知が極めて低いことがわかった。
この調査は、全国の20代から60代の一般男女1,000人と、乳がん患者とその家族である男女300人を対象に実施したもの。乳がんの全摘手術後の乳房再建術に健康保険が適用されていることを知っていたのは、全体でわずか3%、乳がん患者とその家族でも8%であった。シリコンインプラントを使った乳房再建への保険適用が2013年7月に開始されて1年が経ってからの調査であったが、その認知度は極めて低いといえる。
費用を乳房再建への障害に感じる患者多く
そして乳房再建について懸念される点という質問に関して「入院や通院の時間や手間がかかる」「身体への負担、合併症などのリスク」という回答を抑え、「費用の負担が大きい」という回答が最も多い結果となった。しかし保険適用されることで、以前は100万円以上かかったインプラントによる乳房再建は、健康保険と高額療養費制度の活用によって自己負担額は10万円程度となる。よって保険適用に関する理解が十分に進んでいないことが推測される。また、乳房再建がどういった治療法かを知っている人は全体の18%と、乳房再建そのものに対する認知度がまだまだ低いことも明らかになった。まずは保険適用も含めて乳房再建に対し、正しい理解を広めることが今後の大きな課題となるだろう。
■取材・文/瀬田尚子 出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。関連ニュース・トピックス
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