国立がん研究センターは、主ながんの種類ごとに、がんのなりやすさを示す罹患状況を全国平均と比べた地域別の分析結果をはじめて発表した。
胃がんは日本海側で多い傾向があり、肺がんは北海道や近畿地方で多い傾向があり、肝臓がんは西日本が高いなどの特徴が明らかになった。
国立がん研究センターは、40の道府県から集めたがん患者のデータを解析。2011年にがんに罹患(新たにがんと診断されること)した全国推計値を算出し、7種類のがん罹患率の道府県別の値を算出した。全国平均は、特に精度が高い14県のデータから推計した。
がん罹患率 男性1位は胃がん 女性1位は乳がん
2011年に新たにがんと診断されたのは男性49万6,304人、女性35万5,233人、合計85万1,537人だった。各部位の罹患数は、2010年の推計と比較し、男性では4位だった前立腺がんが2位に上昇した。女性では順位変動はなかった。
日本のがん罹患数・率の最新推計値を公開
発表によると、罹患率が男性1位、女性3位の胃がんは男女ともに日本海側に多く、塩分の多い食生活や、胃がんの原因になると疑われているピロリ菌の感染などが影響している可能性がある。
また、死亡率が男性1位、女性2位の肺がんは、男性が北海道と青森県、近畿地方で高かった。これらの地域で喫煙率が高いことが影響しているとみられる
さらに、罹患率が男性5位の肝臓がんは、肝炎ウイルスの感染者が多い兵庫、徳島、大分など西日本や山梨県で多いことが判明した。
男性4位、女性2位の大腸がんは北海道、東北、山陰地方で罹患率が高かった。乳房、子宮、前立腺の各がんでは顕著な地域差はなかった。
長野県と広島県では、罹患比が高い一方で死亡者の割合が少なく、同センターは「がんの早期発見や標準治療が有効に行われているからではないか」とみている。
データが十分でないことや、登録事業を始めていないことが理由で、がん患者のデータが揃っていないのは宮城、埼玉、東京、静岡、大阪、福岡、宮崎の7都府県。2016年からがん患者の登録が法律で義務づけられるため、新年度発表の2012年分からは、47都道府県がそろう見込みとしている。
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