乳がんのがん細胞は、わきの下にあるリンパ節(腋窩リンパ節)に入り込み、全身に転移します。この腋窩リンパ節を手術で取り除き、実際に転移があるかどうかを調べるのが「腋窩リンパ節郭清」です。早期乳がんには、より体の負担が少ない「センチネルリンパ節生検」が行われます。
腋窩リンパ節郭清の必要性とその影響
転移の状況を知るために有効だが、合併症も
乳がんのがん細胞が最初に転移するリンパ節のほとんどが「腋窩リンパ節」で、そこからリンパの流れにのって、周辺のリンパ節に入り込み。全身に転移します。そのため、手術前に触診や画像診断などで腋窩リンパ節に転移があると診断された場合には腋窩リンパ節を切除します。これを「腋窩リンパ節郭清」と呼びます。リンパ節郭清の範囲は腋の下から鎖骨に向かって、レベル1から3に分けられますが、転移レベルとともに周辺の脂肪とともにリンパ節を切除します。現在はレベル1からレベル2の郭清が一般的です。
切除した後は病理検査でリンパ節に転移がないかを調べますが、転移個数が多いほど再発の危険性が高くなることが知られており、術後の治療方針を決めるためにも重要であると考えられます。
ただし腋窩リンパ節郭清を行うことで、手術した側の腕が上がりにくくなったり、しびれたりする症状のほか、リンパの流れが滞り、腕や手がむくむ「リンパ浮腫」という合併症が起こることがあります。
センチネルリンパ節生検とは
腋窩リンパ節への転移が認められない、早期乳がんが対象
腋窩リンパ節郭清は、乳がんの標準治療として行われてきましたが、2000年代前半から、手術前に明らかな腋窩リンパ節への転移がないと診断された早期乳がんでは、より体への負担が少ない「センチネルリンパ節生検」が行われるようになりました。
センチネルリンパとは乳房内にある乳がん細胞が最初にたどり着くリンパ節と定義されています。「センチネル」とは見張り役という意味です。生検によってこの部分の転移がないとわかれば、その他のリンパ節の郭清を行う必要はないと判断できます。
通常、センチネルリンパ節生検は乳房の手術の際に行われます。腫瘍の周りや乳輪に微量の放射性同位元素(わずかな放射線を発する物質、アイソトープ)、もしくは色素を注入すると、リンパ管を通じてセンチネルリンパ節に集まります。放射線が検出されたり、色素で染まったりしたセンチネルリンパ節を摘出して、切除し、転移の有無を即座に顕微鏡で調べます。もしセンチネルリンパ節に転移がなければ、腋窩リンパ節郭清は省略できます。
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