がん治療を楽にする口腔ケア

No.4 乳がん患者さんに起こりやすいお口のトラブルと知っておきたい豆知識

百合草 健圭志 静岡県立がんセンター 歯科口腔外科部長
(2018年03月)
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がんの患者さんによくみられるお口のトラブルとは?

 答えは、「歯周炎」「智歯周囲炎(親知らずが腫れる)」「口内炎」の3つ。

 歯周炎=歯肉炎が進行した状態。歯ぐきのはれや出血があり、歯周ポケットが形成され、ポケットからの排膿、口臭などがみられるようになります。

よくあるのは『親知らず』が悪化するケース

 百合草先生によると、がん治療やその副作用で体力が落ちると、もともとあった口の問題が悪化してくることがあります。

「例えば、『親知らず』が腫れてくる智歯周囲炎。『親知らず』は、斜めにはえていたり、先の方だけが出ていたりするため、そこに汚れがたまり、もともと歯周炎になりやすい場所です。そのため、もともとあった歯周炎が抗がん剤治療で悪化し、治療中に歯がうずくことがあります。事前にわかっていれば、抗がん剤の治療中は抗生物質で炎症を抑え、歯みがきをしっかりしてもらうことで腫れが治まります。どうしてもコントロールできない場合は、歯科担当医としてがん治療担当医と相談して、抗がん剤治療中に抜歯することも検討します」

POINT

 『親知らず』がある患者さんは、治療前に歯科医でチェックを。治療中は、歯肉炎や歯周炎が悪化しないように、正しい歯みがきを心がけることも大切です。

奥歯や『親知らず』の磨き方にはコツがある

 奥歯や『親知らず』は、磨き残しが出やすい部分。

 口を開けていると、奥歯に歯ブラシが届きにくくなるので、少し口を閉じ気味にして、歯ブラシを横から差し込むように入れて磨くのがコツです。

アフィニトールを服用している患者さんへの情報

 「口内炎は、がんの治療中によく見られる症状。一般的に抗がん剤治療では、約4割の患者さんにみられます」と百合草先生。

 しかし、乳がんの治療などで使われる「エベロリムス(商品名:アフィニトール/自宅で内服治療できる分子標的薬)」による治療を受けている患者さんでは、9割に口内炎が出たという報告もあります。なかには口内炎がつらくて、治療を止めたくなってしまうケースも少なくないそうです。

 「分子標的薬は、特定のがん細胞にだけ作用する薬剤といわれ、副作用の軽減が期待されましたが、残念ながらさまざまな副作用が出ます。エベロリムスでも、今までとは別のタイプの口内炎が出ることがわかっています。特徴として、治療開始から1週間ぐらいすると、1cmくらいの小さな口内炎がポツっと出てきて、しみます。ただし、最初の1ヵ月間を耐えれば、口内炎の出現頻度は徐々に下がっていきます。言い換えれば、使い始めにつらい症状がでますが、1ヵ月たって慣れれば、その後は楽に継続できると言えます。つらいときには、口内炎の治療をうけましょう。このアフィニトールによって起こる口内炎にはステロイド薬がよく効くことが知られています。もちろんうがいや歯みがきなどで口内を常に清潔に保つことも大切です」(百合草先生)

 従来の抗がん剤治療による口内炎ではステロイド薬は使わないそうですが、アフィニトールを服用中の口内炎は、アフタ性口内炎に特徴が似ており、ステロイド薬がよく効くそうです。

 このように、自分や家族に使われる抗がん剤の特徴を知っておくと、心の準備も、必要な対処もできますね。

知っておきたい医科歯科連携について

 がんを治療する病院の診療科に必ず歯科があるとは限りません。

 「かかりつけの歯科医がいる人は、がん治療を始める前に、一度受診しておきましょう。治療が必要な歯はないかどうかを確認したり、歯のクリーニングをしておいたりするといいですね。治療に必要な口腔ケアは保険診療で受けられます。普段から定期的に受診し、歯医者ささんと仲良くしておくと、がんの治療の際にもサポートを受けやすくなると思います」(百合草先生)

 かかりつけ医がいない場合でも、現在、全国約1万2000名の歯科医師が、がん連携登録歯科医となり、がん患者さんの口腔ケアをサポートしています。がん治療の担当医に紹介状をもらい、この連携登録歯科医を訪ねてみるとよいそうです。

 ※こちらから検索できます。>>がん連携登録歯科医名簿

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