遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)のいまとこれから

No.4 HBOCへの対応 日本の現状、欧米との違いとは?

中村 清吾 昭和大学医学部 外科学講座乳腺外科学部門教授、 昭和大学病院ブレストセンター長
(2017年12月)
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 欧米では、すでに遺伝性乳がん卵巣がんの遺伝子検査が普及し、HBOCのリスクが高い人の検査体制が整い、遺伝子に変異が認められた場合、予防的治療が選択肢の一つとなっています。

 一方、日本でも、乳がんの患者さんやご家族の希望に応えるため、遺伝子検査や予防的な治療を普及させようという動きが活発になってきています。ただし、遺伝子検査も予防的な治療もすべて保険適用外なので、経済的な負担を考慮しなければならず、必要な方へ普及するまでにはなかなか至らないというのが現状です。

韓国の遺伝子検査率は9割
日本では、高額な費用負担がネックになっています

 日本においても、遺伝性乳がん卵巣がんに関するBRCA遺伝子検査は、医療機関で実施可能ですが、全額自己負担となり、費用は20〜30万円と決して安くありません。アメリカではBRCA遺伝子検査が年間30万件以上行われているのに対し、日本では年間千件に届かないのが実情です。

 また、韓国では、BRCA遺伝子検査が保険適応となっており、個人負担が1万円以下。遺伝カウンセリング後の検査施行率は9割にものぼります。

 その理由としては、韓国において、HBOCの大規模な研究が行われたことが大きいでしょう。数千の症例をデータとして蓄積し、国民の中に遺伝性乳がんの女性が一定数存在することや、対策を講じれば乳がんによる死亡率を減少できるなどの研究成果が発表され、その結果として、保険適応が実現できたのです。

HBOCに関わる検査・治療について
先進医療を申請し、保険適応を目指していく

 こうした流れを受けて、日本でもHBOCの研究や医療システムの構築が勧められています。

 現在、HBOCの研究団体「日本HBOCコンソーシアム(理事長・中村清吾)」では、日本独自のHBOCのデータベース作りを始めています。まずは、日本人のデータベースを構築し、遺伝子検査やハイリスク女性の乳がん検診、リスク低減を目的とした手術を先進医療に申請し、保険適応に結びつけていきたいと考えています。

 HBOCは、遺伝情報を手がかりに発症を予測し、効果的な対策がとれる疾患です。つまり、遺伝的リスクが高い人をあらかじめ拾い上げることができれば、再発後にかかる費用や一生涯にかかる医療費を減らすことができ、医療経済的にもプラスなのではないか。ハイリスク女性への保険適用を国に働きかけていくということも、乳腺専門医の使命だと考えています。

 今後の普及には、「どこの施設に行ったら、カウンセリングや検査や予防的治療が受けられるのかがわかる」ということもポイントになるでしょう。遺伝子検査を受けて終わりではなく、医療機関は、検査後の心理ケアや対策までセットにして提供する必要があります。遺伝子検査やHBOCに適した検診が可能な施設の整備、カウンセラーの育成もしていかなければなりません。

 さらに、アメリカで行われているような「遺伝情報で差別を受けない」という法整備も必要になっていくと思います。

 こうした活動には、一般の方々のご理解、そして乳腺医師をはじめ、医療関係者のご協力が欠かせません。ぜひ、ご協力いただければ幸いです。

検診の選択・保険適応の議論も今後の課題

 現在、乳がん検診は「40歳以上、2年に1回の問診及びマンモグラフィー」(厚生労働省)が推奨されています。

 一方、BRCA遺伝子変異保持者の方には、MRI検査が特に有効であり、ガイドライン上においても検診の1つの手段として紹介されています。アメリカでは乳がんの生涯発症リスクが2割を超える人に対して、またイギリスでは同3割を超える人に対して、MRI検診の保険適応を認めていますが、日本でハイリスクの方がMRI検診を受ける場合は、全額自己負担です。

 HBOCの方への検診プログラムを充実させていくためにも、乳がんを発症するリスクが、通常よりも高い人に対してMRI検診を行うことと、リスクのない人に2年に1回マンモをすることが、総合的にどれくらい医療経済的なメリットがあるのかという議論も、今後、行っていく必要があります。

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