遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)のいまとこれから

No3. 遺伝性乳がん卵巣がん症候群の診断法〜遺伝子検査を受けるメリット・デメリット〜

中村 清吾 昭和大学医学部 外科学講座乳腺外科学部門教授、 昭和大学病院ブレストセンター長
(2017年08月)
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 ここでは、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)かどうかを調べる遺伝子検査について述べます。遺伝性のがんを調べるには、親族の病歴を調べたり、遺伝子検査をするなどして専門的に判断されます。

 欧米では、日常的ながん診療の場で遺伝子検査が普及していますが、日本では自ら遺伝カウンセリングや遺伝子検査を受けに行く人は、まだまだ少ないのが現状です。そもそも遺伝子検査について知られていないという問題があります。希望する方は、遺伝カウンセリングとはどのようなものか、また遺伝子検査のメリット・デメリットについても理解を深めておくとよいと思います。

がんの遺伝カウンセリングとは?

 遺伝性の病気や遺伝性が疑われる病気について、本人や家族が相談できるしくみのこと。遺伝性の乳がんが疑われるときや、遺伝性乳がんのリスクや遺伝子検査について詳しく知りたい・相談したいというときに役に立ちます。

 HBOCに関係する遺伝カウンセリングには、大きくわけて、乳がんの患者さんが主治医からの勧めで相談するケースと、がんの家族歴がある方などが自ら希望されて相談するケースがあります。病気になった本人だけでなく、家族も利用することができます。

 カウンセリングでは、認定遺伝カウンセラーが、専門的な情報をわかりやすく説明します。また、相談者の家族歴、病歴などの情報や遺伝子検査を利用したりしながら、がんの遺伝性を評価し、今後の検診計画等の対策を話し合います。家族にうちあけるべきかといった相談にものります。遺伝子検査を受けるよう強要されることはありません。

受診科:
大学病院やがん専門病院のカウンセリング外来
費用 :
1回数千円〜2万円程度(全額自己負担)

BRCA1/2遺伝子検査とは?

 「BRCA1/2遺伝子検査」とは、HBOCの原因となる「BRCA1/2遺伝子」に変異があるかどうかを血液検査で調べる検査のこと。また、この検査は誰でも受けられるというものではなく、HBOCが疑われる人、もしくはその血縁者が受ける検査になります。検査の前に、まずは遺伝カウンセリングを受けるのが一般的で、検査を受けるか受けないかは、検査を受ける方の自由な意志に基づきます。

 検査の所要日数ですが、家系のなかで初めて検査を受ける「発端者検査」では3週間程度、すでに遺伝子変異がどの部位にあるかわかっている家系の「血縁者」検査では1週間程度で、検査結果がわかります。

受診科:
大学病院やがん専門病院、遺伝診療部や遺伝外来を仮設している医療機関など
費用 :
20〜30万円程度(自費診療)

BRCA遺伝子検査・遺伝カウンセリングを実施している国内の施設は、日本HBOCコンソーシアムのWEBサイト で検索できます。

遺伝子検査を受けることで、予防や治療の選択肢が増えます。

 遺伝子検査を受けてHBOCと診断された場合には、予防的(リスク低減)手術を受けられる、再発を防ぐ対策をとることができる、家系内でがんへの備えができるなどのメリットがあります。

 一方、検査でわかるのは、がんの発症に関与しているとされる「BRCA1/2遺伝子」の病的変異の有無です。遺伝子変異が見つかった場合でも、実際にがんを発症するかどうかや発症時期までは予測することはできません。検査を受けたことでかえって不安や心理的ストレスを抱えてしまうケースもあるため、遺伝子検査は、主治医やカウンセラーなどとよく話し合い、検査の限界や検査を受けることによるメリット、デメリットをよく理解した上で、受けることが勧められます。

【メリット】
・ 今後発症しやすいがんを予測することができる
・ がんへの備えが早くできる
・ 予防や治療の選択肢が増える
・ ムダな検診を省くことができる
・ 血縁者で情報を共有することで、がんの早期発見・早期治療につなげることができる

【デメリット】
・ 遺伝子検査費用は保険適用外で被験者の負担が大きい
・ 検査可能な医療機関が限られる
・ 遺伝情報が不適切に扱われた場合には、被験者や被験者の血縁者に社会的不利益(差別など)がもたらされる可能性がある

日本におけるBRCA1/2遺伝子検査の普及に向けて

 現在、日本においても遺伝子検査や予防的な治療を普及させようという動きが活発になってきていますが、実現にはいくつかのハードルがあります。

 例えば検査費用。韓国ではすでに、BRCA検査の保険適用が認められ、遺伝カウンセリング後の検査施行率は9割。個人負担は、韓国では個人負担が1万円以下なのに対して、日本では20〜30万円前と高額です。加えて、遺伝子検査陽性となった場合の対策(MRI検診やリスク低減手術など)が日本ではいずれも保険適用外であることも、普及の遅れの原因になっています。

 こうした制度の問題や、HBOCへの対応(日本の現状、海外との違い)などについては、次章で詳しく述べます。  

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