乳がんとともに生きる人を理解する

No.9 周囲の人にがんを告知するとき、どうすればいい?

青木 美保 帝京大学医学部附属病院 帝京がんセンター 認定遺伝カウンセラー
(2017年03月)
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 がんであることをほかの人に知らせるのは、たとえ家族や親しい友人であっても、とても難しいことです。それはがんが進行しているほど難しく感じるでしょう。

 それは、がんと告知された患者さんがショックを受けたように、がんだと知らされた周りの人も少なからずショックを受けることを、誰もが知っているからです。

 

 誰になぜ知らせるほうがいいか

 がんであることを誰に知らせる必要があるか、また誰に知らせたいか、どこまで、どのタイミングで知らせるかをよく考えてみましょう。

 がんになったら、通院や入院による治療が必要になり、治療スケジュールやその副作用によっては、日常生活・家事・仕事を手伝ってもらったり、さまざまなスケジュールや内容の見直し、変更を余儀なくされることもあるでしょう。がんであることを知らせる必要がある人は、がんであることによって直接影響を受ける方です。

 たとえば、一緒に生活しているパートナーや子どもなど、職場の人事担当者や直接の上司(派遣であれば派遣元)、学校の指導教官、また本人が乳がんになったためにリスクが高くなる血縁者(両親や姉妹など)などでしょう。 一緒に生活している家族は、あなたががんになったと知れば大きなショックを受けるでしょうが、日常生活や家事をサポートしてもらうためにも、早いうちに知っておいてもらう必要があるでしょう。

 働いている方は、職場の人事担当者や直接の上司、派遣であれば派遣会社の担当者、通学中なら学校の指導教官にも、早めに相談しておきましょう。乳がん治療を受けていることを上司や同僚に伝えておけば、治療のために業務に支障がある場合に、業務内容や配属先を考慮してもらったり、周囲の協力が必要になることもあるでしょう。実際に同僚がサポートしてくれて助かった、仕事がやりやすくなった、もっと早く伝えておけばよかったという声もあります。

 また、家族が乳がんになったことで、将来乳がんになるリスクが高くなる両親や姉妹には、治療が一段落したら、知らせておくほうがいいでしょう。

 パートナーに伝える

 パートナーには、事実をできるだけ早く知らせましょう。乳がんだと知れば、パートナーもショックを受けることでしょう。それでも、がんや治療に対する恐れや不安などの気持ちをパートナーと率直に共有できれば、大きな心の支えになるはずです。パートナーは気の利いた言葉をかけようと無理する必要はありません。また、根拠のない精神論で頑張れ、頑張れとただ励ましの言葉をかけるばかりでは、かえってお互いに辛くなるかもしれません。

 また、乳がんの原因はまだ科学的に解明されていませんので、なぜ乳がんになったのかという理由を突き詰められると辛くなるでしょう。理由がわからないことは脇に置いておきましょう。パートナーは話をよく聞いてあげて、病気だからといって特別扱いにするのではなく、普段通りに接して、温かく見守るだけで、本人には大きな励ましになるものです。

 パートナーも少なからずショックを受けている状態なので、できるだけ自然体でいることが、パートナーの精神的な負担をできるだけ軽くできる方法かもしれません。また、パートナーも心身の健康が大事です。できるだけ心身を休めるようにして、抱え込みすぎて辛くなる前に、誰かに打ち明けるようにすると、気持ちが軽くなるでしょう。

 子どもに知らせる

 母親が乳がんになったことを子どもに知らせることは、子どもの年齢や性別にかかわらず、難しいことでしょう。

 子どもにショックを与えたくないと思うと、話しづらいかもしれません。でも、子どもは小さければそれなりに理解しますし、年長になれば、親の病気や治療が必要なことをかなり理解できます。

 多くの親は、自分の治療方針が決まるまで、子どもに伝えるのを待つことが多いのです。それは、治療方針が決まれば、治療のために起こる日常生活や家事分担に変化を想定できるからでしょう。

 子どもに隠し事をすると、子どもは母親に何か心配事があることを鋭く察知して、余計に不安になるでしょう。子どもにはできるだけ正直でいましょう。病気のことを伝えるだけでなく、病気と闘うために、お母さんがどのように頑張っているかを伝えれば、子どもも応援してくれるでしょう。また、子どもは自分のせいで母親が病気になったのではないかと思いこむこともあります。乳がんになったのは、子どものせいではなく、また誰のせいでもないことを伝えてあげましょう。

 母親が病気になると(とくに母子家庭では)、子どもは経済的な問題のために、自分は将来学校に通えなくなるのではないかと不安になることがあります。

 これは子どもが不安でも、親には言いくいことかもしれません。そのため、母親が乳がんでも、子どもが今後もきちんと学校に行けるようにすることをはっきり言葉で伝えてあげれば、子どもは安心できるでしょう。

 両親に知らせる

 娘が乳がんだと両親に知らせるのも、また辛いことです。母親は娘に代わって、自分が乳がんだったらよかったのにと望むかもしれません。親は手助けの必要がなくても、子どもの手助けをしたいと願うものです。親が遠方に住んでいたり、時間的・経済的な余裕がないかもしれません。現実を変えるために何もできないとわかっていても、それでも親は駆け付けたいと思うでしょう。

 親に伝えたら、遠慮しないで、できるだけ建設的なサポートが得られるように、どのような手助けをしてもらうと助かるのか、具体的なサポートの希望を伝えるといいでしょう。また、親に知らせることが互いに負担になるなら、治療が一段落してから知らせるという選択肢もあるでしょう。

 姉妹に知らせる

 きょうだいが乳がんになると、姉妹が将来乳がんになるリスクは、そうでない方よりも高くなります。

 姉妹は、次に乳がんになるのは自分ではないかと恐れているかもしれません。あなたがどんな治療を受けて、どのように克服したかを教えてあげれば、その恐れを解消する助けになるでしょう。

 友人に知らせる

 友人にどこまで知らせるかは難しい問題です。とくに助けてくれる親しい友人や、がんによってストレスが多くなって、感情的に影響するかもしれない友人には、知らせておくといいでしょう。

 病気についてオープンに話しやすい友人もいれば、何も話せない人もいるかもしれません。自分に負担がない範囲でコミュニケーションを取ればいいし、無理に話さなくてもいいのです。また、直接話すことが辛ければ、Eメールなどを利用すれば、時間の節約になりますし、体の負担も減らせるでしょう。

 職場の上司や同僚に伝える

 職場の人事や総務担当者や直接の上司(派遣の方は派遣元の担当者)に、早めに相談しておきましょう。がんの治療は長期にわたることも多いですし、治療完了後もがんの経過観察のために定期的な診察や画像検査が必要となることが多いのです。そのため、有給や時短制度を利用することもあるでしょう。

 もしがんの治療や経過観察により業務に支障が生じるなら、業務内容や配属先を考慮してもらったり、周囲のサポートが必要になるかもしれません。そうなる前に、乳がん治療を受けていること、治療のスケジュールなどについて上司や同僚に伝えておく必要があります。必要によっては、主治医の診断書を人事や総務担当者(派遣の方は派遣元)、産業医に提出する必要があるでしょう。また、利用できる会社の支援制度について人事や総務に確認したり、自分で就業規則や福利厚生制度を調べておくといいでしょう。

 がんであることを職場ではどこまで知らせるかは、自分が負担にならない範囲でいいのです。職場の方とは互いに負担のない範囲でコミュニケーションをとるようにしましょう。同じ情報を受け取っても、対処の仕方は人それぞれです。なかには、あなたががんであることを知ったとたん、急に態度がよそよそしくなる人もいるかもしれません。それは、単にがんに対して恐ろしいイメージをもっているだけかもしれません。もしかしたら、がんの方とコミュニケーションをとった経験がなく、本人もどうすればいいかわからず混乱しているだけかもしれません。

 今は治療を受けながら、元気に働いているがん患者さんはたくさんいます。そのような姿を職場の方が見せることで、周りの方のがんに対するイメージも変わっていくかもしれません。

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