がんと就労~本人と職場を支える産業看護職のより良い支援とは~

No.2 本人への支援

岡久 ジュン 東海大学大学院健康科学研究科看護学専攻 修士課程 監修:錦戸 典子 東海大学大学院健康科学研究科
(2013年03月)
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ヒント1. 定期的に体調と仕事の状況を確認します

 がんに罹患すると、がんによる症状や治療の副作用などによって様々な体調の変化が生じます。

 産業看護職は、医学的知識と職場環境・作業内容に関する知識をもとに、そのような体調の変化が仕事に及ぼす影響について予測を立てながら、定期的に本人の体調を確認することが大切です。復職直後の体力が十分に回復していない時期においては、時間外勤務を制限したり、短時間勤務にするなどの就業制限が必要な場合があります。

 しかし、がんであることが見た目で分からない場合も多く、周りから「今までと同じように働けるだろう」と誤解されたり、本人自身が休んだ分を取り返そうと無理をすることもあります。産業看護職は、体調を悪化させる働き方をしていないか、本人だけでなく職場の上司・同僚や人事労務担当者などからも情報収集し、本人や職場の状況を多角的にとらえることが大切です。

ヒント2. ちょっとした困りごとにすぐに相談対応します

 産業看護職の強みの一つに、労働者にもっとも身近な保健医療専門職であることが挙げられます。主治医や産業医になかなか本音を話せない人や日常の困りごとを相談できない人でも、産業看護職には気軽に相談できるようです。産業看護職は、がんに罹患した労働者本人が抱えている不安をタイムリーにキャッチできるよう、常にアンテナを広げて対応していく必要があります。

 具体的には、定期面談の際に困っていることがないかを尋ねたり、職場にこまめに出向いて適宜声かけすることを心掛けるとよいでしょう。看護専門職の立場で的確にアドバイスし、一つ一つの相談ごとに真摯に対応することで、お互いの良い関係性を構築することができます。

ヒント3. 本人の自己決定を支えるための働きかけをします

 がんの場合、早期発見により1~2週間程度の休業で済む場合もあれば、長期的に治療が必要になる場合もあります。

 産業看護職として、本人が抱える困難やニーズを把握したうえで、会社としてどのような受け入れ態勢が可能であるかを考慮し、本人の自己決定を支えていくことが大切です。本人が仕事を続けることに生きがいを見出している場合には、可能な限り本人の意向に沿った支援を行うことを伝えておくことで、本人の活力につながることもあります。

 また、復職の前段階には、通勤や業務をイメージしながら復職に必要な事柄について主体的に情報収集や準備をするよう本人にアドバイスすることも、看護職ならではの働きかけと言えるでしょう。このように、産業看護職はがんをもつ労働者本人の自己決定を促すきっかけとなるような情報提供や支援をしていくことになります。

ヒント4. 精神面や情緒面をサポートします

 がんは何の前触れもなく診断を突きつけられることが多く、がんと診断された労働者本人はこれからの治療のことや、突然会社を休まなければならない状況に対して不安を抱えることになります。本人が安心して休業し、治療に専念できるような声かけが必要となります。また、安定しているように見える時期でも、病状の悪化や再発に対する不安を解消することは難しいものです。本人の不安を受け止めながら、がんの経過に応じて気持ちの変化を把握することも産業看護職の重要な役割となります。

ヒント5. プライバシーに配慮して、健康情報を含む個人情報を取り扱います

 プライバシーの問題は、疾病をもつ労働者にとって共通の課題です。特にがんの場合は、予後に関わる情報やがんの部位(生殖器系のがんなど)を上司・同僚や人事に知られたくないと感じる人も多いと考えられます。

 がんの場合、就労の許可や就業配慮を決定するうえでは、詳細な病名よりも、がんの進行度や治療によって体調にどのような変化があるのか、何が業務の支障になるのか、という情報が重要です。産業看護職は、支援に必要な情報と会社の規程上必要な情報を区別し、十分に理解したうえで行動することが重要です。

 本人の支援に関する5つのヒントから、がんをもつ労働者に対して産業看護職が行う支援を述べてきました。がんの部位やステージによって本人がたどる経過は様々です。また、産業看護職の所属によっては、対応できることも異なるでしょう。中立的な立場で、本人や上司、人事の思いを把握しながら、各々の主体性を高められるような支援をしていくことが産業看護職として大切なことだと思います。

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