働く女性と乳がん
-がん治療と乳房再建のいま-

No.9 これからの乳房温存術 オンコプラスティックサージャリ―

辻 直子 セルポートクリニック横浜院長、杏林大学形成外科非常勤講師
(2017年08月)
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 乳房温存術が始まった頃は、術後に乳房再建をすることはほとんどありませんでした。基本的に乳房は温存されているので再建も必要ない!と考えられていて、医師側でも再建を勧めることはほとんどありませんでした。


 しかし、乳房温存術が広まり乳房温存率というもので病院が評価され始めると、少し大き目の腫瘤でも乳房を温存するケースが増えてきました。

 患者さんも、「温存」という言葉に惹かれて、できるだけ温存してほしいと望むようになったのです。そのため、やや無理に温存術を行い、術後の乳房変形が大きい結果になることも増えてきました。その流れで、温存術後の再建も行われるようになったのですが、放射線照射をしていると再建の難易度は上がります。

 社会の変化や患者さんの知識の増加に伴い、乳がんの手術も、整容性を無視したものではなくなってきました。

 がんさえ治ればよいという時代ではなくなり、その後のQOL(生活の質)も重要視されます。特に、乳房は女性のアイデンティティでもありますから無理な温存術や大きな変形は看過されなくなってきているのです。

 そこで術後に変形が予測される場合の対策として二つの方針が生まれてきました。

全摘出+乳房再建

  1つは、無理に温存して変形が大きくなりそうなのならば全摘して、放射線照射をせずに再建した方が再発率も低く(生存率は変わりませんが)整容性も保たれるのではないか、という考え方です。

 これは再建する側からすれば全くその通りなのですが、患者さんや乳腺外科医からすれば、残せるものを切除するというのは勇気のいることです。しかし、徐々に、無理な温存の結果の変形や、全摘後にも確実にある程度の乳房が再建できることが示されると、温存手術の割合は減るようになりました。

 一時期、増え続けた乳房温存率も、施設によっては5~6割となっています。それが良いのか悪いのかはわかりませんが、患者さんが温存という言葉に惑わされず、乳房温存術の適応や術後の予想される変形、温存後に再建する場合のリスクや全摘した場合の治療について、正確な情報をもとに判断し自分にとってのベストな方法を選択できるようになることは喜ばしいことだと思います。

オンコプラスティックサージャリ―

 もう1つはオンコプラスティックサージャリ―という考え方です。

 この言葉は、1990年代のヨーロッパで根治性と整容性のバランスを重視した様々な取り組みから生まれました。根治性を担保できる範囲の乳腺切除と同時に乳腺組織の移動を行う方法や、乳房固定術の要素を取り入れた乳腺部分切除などの方法など、温存後の変形を最小限に抑え欠損を修復する手技全般のことを指します。

 そもそも、乳房温存術が乳房切除よりも術後の整容性を維持するために始まったものですから、乳房温存術の目的は乳がんの局所制御と並んで術後の整容性をいかに保つかです。そのために切除の方法や術中に欠損を補填する工夫などを積極的に行うという考え方が広まってきました。

 日本では、日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会が2008年に設立され、乳腺外科医と形成外科医が根治性と整容性について切磋琢磨しています。

 この学会は、【乳房再建用エキスパンダー/インプラント実施施設 認定一覧】 などの認定の実施とリストの作成しています。当医院(セルポートクリニック横浜)も登録しています。また、全国版ですので、自宅や勤務先の近くでの病院探しの参考にすることもできます。

 オンコプラスティックサージャリーは、手技の伝達や保険の問題など、まだ解決するべき問題点は多くありますが、これらの考え方や手術手技が広まって浸透して行けば、乳房温存術後の大きな変形も無くなり、より患者さんのQOLが向上することが期待できるでしょう。

変化し続ける乳房再建
ご自身が納得する選択決定に必要なのは「情報収集」

 以上のように、乳房温存術はその適応や再建方法も含め時代により変化し続けています。根治性が最重要なのは言うまでもありませんが、それに加え整容性も考慮することが必須となってきています。

 温存にするのか全摘にするのか、再建の方法は、時期は...と様々な選択肢がありますが、誰にでも共通する正解はありません。そのため、医療従事者と患者さん側の両方で新しい情報を取り入れて、納得できる治療法を選択していく必要があります。ひとりで悩まずにまずはご相談にきてくださいね。一緒にベストな治療・再建方法を探しましょう。

【参照】
 ・ 日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会 HP
 ・ セルポートクリニック横浜 乳房再建説明会

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