働く女性と乳がん
-がん治療と乳房再建のいま-

No.4 乳房再建には多くの選択肢があります

辻 直子 セルポートクリニック横浜院長、杏林大学形成外科非常勤講師
(2016年04月)
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 さて、一般の患者は乳房再建についてどのくらい知っているのでしょうか?

 普通は、自分が乳がんになるなんて思ってもいませんから、ほとんどわからないのが実状でしょう。実際の患者への説明の前に伺うと、何となく、「シリコンを入れるときいたことがある」くらいの認識の方が多いですね。

 実際には乳房再建には多くの選択肢があります。

 それぞれに手術のやり方はもちろん手術回数や入院日数、できる傷の場所や大きさ、出来上がりの乳房の特徴など、様々な違いがありますので、しっかりと違いを理解して自分に一番合った方法を選択する必要があります。ここでは乳房切除(全摘)後の再建について、大まかに説明していきたいと思います。

 再建方法は大きく分けて2つ

 乳房を何で再建するかによって2つに分けられます。ひとつは自家組織再建です。自家組織とは自分の筋肉や脂肪などの組織のことで、一般的には腹部や背部の脂肪と筋肉とひとかたまりにして切り出して血管と共に移植する、皮弁移植法がこれにあたります。

 もう一つはシリコン乳房インプラントを用いた乳房再建です。乳房再建用に乳房の形をしたシリコンインプラントを胸に挿入する方法です。

 これら2つから選んでいくことになりますが、実際は皮弁とインプラントを両方組み合わせた再建方法があったり、皮弁ではない自家組織移植である脂肪注入なども皮弁移植やインプラントでの再建に併用されたり、またティッシュエキスパンダーを使う場合と使わずに再建する場合があったりと、その組み合わせは多数あります。

 まずは一つ一つの再建方法をじっくりと理解してから、色々な可能性を考えていきましょう。

 皮弁法

「皮弁」は、血流のある皮膚・皮下組織や深部組織を移動させる移植方法」のことを指します。

 一般の方はほとんどご存じないでしょうし、医療従事者でも形成外科や特殊な領域でないとあまりピンとこないかもしれません。

 簡単に言うと、自分のお肉をひとかたまりにして離れた場所に移動するやり方で、そのかたまり肉(牛肉みたいな表現ですね)を栄養する血管を一緒にもっていかなくてはなりません。 乳房再建で用いられるのは、腹直筋皮弁と広背筋皮弁が代表的なものです。作りたい乳房の大きさや今後の挙児希望の有無などで皮弁の採取部を選びます。

 腹直筋皮弁

 腹直筋皮弁の場合、下腹部の皮膚と脂肪を大きく採取してきます。

 遊離皮弁として移植する場合の皮弁の栄養血管は下腹壁動脈で、腹直筋~鼠蹊部まで血管を剥離して拳上し、胸部へ移植したら胸背動脈や内胸動脈へ血管吻合します。腹直筋へのダメージを避けるために穿通枝皮弁として拳上することもできます。

 この皮弁は皮切が大きく、血管の操作もやや煩雑なため手術時間が長くかかるのが難点で、8~10時間程度要します。

 さらに術後の安静も必要なため、入院は2~3週間かかることや術後も多少の運動制限が続くことから、手術が生活に与える影響は一番大きいと言えるでしょう。

 ただ、この皮弁ではボリュームが多くとれますので、大きな乳房でもたっぷりと再建でき、柔らかく揺れる乳房が再現できます。お腹の肉を取ってしまいますのでお腹が平らになるという副次的な利点もあります。

広背筋皮弁

 広背筋皮弁は有茎皮弁で、腋窩部分の胸背動静脈を切離せずに皮弁移植できますので腹直筋に比べると手技も容易で、時間も3~5時間程度と短く済みます。

 術後も早期から歩行可能ですが入院期間はやはり2週間程度かかります。比較的負担の軽い皮弁ですが、大きなボリュームはないので、A~Bカップ程度のやや小さ目の乳房の再建に適しています。

 代表的な2つの皮弁をご紹介しましたが、共通して言えるのは、柔らかく温かい乳房が再建できること、再建後はメンテナンス不要であるという利点があることです。やはり苦労した分、乳房の満足度も高いと言えます。

 ただし入院期間が長いことや皮弁採取部に長い瘢痕が残ることは患者にとっても負担となりますのでこのあたりの差し引きで考える必要があります。最終的には人工物を体に入れるのが不安なので皮弁法にした、という話は良く聞かれますね。

 頑張って作って、あとは安心の自家組織―――というところでしょうか。

 皮弁法についてご説明しましたが、次回はもう一つの選択肢であるシリコンインプラントを用いた再建について、解説していきたいと思います。

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