働く女性と乳がん
-がん治療と乳房再建のいま-

No.2 働きながら、乳がんの治療はできる?

辻 直子 セルポートクリニック横浜院長、杏林大学形成外科非常勤講師
(2016年02月)
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 前回は急激に増加する乳がんの罹患率についてお話いたしました。  乳がん発症のピークは50歳代ですが、最近では30歳代や40歳代の乳がん患者も珍しくありません。それはまさに、働き盛り世代、子育て世代を直撃します。

働く女性の増加

 総務省統計よると、女性の就業率は15-64歳全体で65.5%と過去最高を記録しています(2015年10月)。特に20代後半から30歳代で上昇しています。


総務省統計局 年齢階級(5歳階級)別就業者数及び就業率より作成

 これは結婚しても共働きをする女性や、家事・育児と仕事を両立させて頑張っている女性が増加していることを表しています。そのような女性が乳がんの宣告を受けた時、自分の体の心配ももちろんありますが、「仕事続けられるかしら」「治療や入院の間、子供の世話をどうしよう」と考えてしまう女性も少なくないのではないでしょうか。

―手術前― 乳がん治療と仕事

 実際の乳がん治療ではどのくらい通院や入院が必要なのでしょうか。

 まず、乳がんの診断と手術までは、ほとんどが通院での検査になります。大体はマンモグラフィーとエコーの後に針生検の検査をし(ここまで通院3-5回)、乳がんの診断が下った後はさらに転移の有無やがんの拡がりを調べていきます。MRIや腹部エコー、CTなどの検査を外来で行った後に手術の予定が組まれます(さらに通院2-3回)。乳がんの手術は体表の手術ですので、乳房温存でも乳房切除(全摘)でも手術翌日には歩行や飲食が可能で、3日~7日程度で退院となります。その間は仕事を休まなくてはなりませんが、術後はデスクワークなどの軽労働であればすぐに再開できます。

―手術後― 乳がん治療と仕事

 手術が終わったらそのあとに、必要があれば放射線照射や抗癌剤治療、ホルモン療法などが行われます。大体の方針は手術の病理結果が出てからになりますので、術後約1ヶ月後から併用療法の開始です。ホルモン療法は基本的には内服治療と外来での注射ですので3ヶ月に1回程度の通院が必要ですが、あまり仕事への影響はないとみていいでしょう。

 放射線照射は1ヶ月間、平日は毎日照射のために通院が必要になります。1回の所要時間は30分程度と短いです。抗がん剤の場合はたいてい3週間に1回程度、3ヶ月から6ヶ月くらいの通院となります。こちらは点滴が2時間くらいかかることもあります。

 どちらも定期的な通院が必要なため、仕事の都合をつけるのが大変な場合もあるでしょう。手術や通院のために退職や、非正規雇用へ変更する患者さんもいます。しかしもちろん、仕事をつづけながらこれらの治療を受けている方も多くいらっしゃいます。職場への病状の報告や勤務時間の変更などは必要となりますが、計画的に進められますし、丸1日つぶれるわけではないので、曜日や時間帯を選べば何とかやり過ごせるでしょう。


がんと仕事に関する支援ツールも多くあります。 参照:がんと仕事のQ&A(国立がん研究センター)

周囲のサポートが大切

 もちろん、放射線照射や抗癌剤治療の副作用もありますし、ホルモン療法も更年期障害のような症状が出ますので、治療期間中はこれまでと全く同じようなパフォーマンスで働くことは難しいかもしれません。病院が遠い場合は通院のための往復時間もかかることもあり、治療中に気分が落ち込むこともあるでしょう。そんなときにまず大切なのは周囲の理解とサポートです。家族や友人などが一般的ですが、医療的なことや治療の内容の相談は病院の相談室や保健師のほうが話しやすいこともあります。また、がん患者会などで情報交換することも不安を軽減する良い方法です。

 仕事を続けながらの治療は大変なことも多いですが、逆に仕事をしているから気がまぎれたり、術後のリハビリになったりすることもあります。そして、治療費もかかることから仕事を続けていた方が経済的にも安心です。本当にスケジュールや体調の調整が大変なのは数ヶ月です。無理せず、計画的に、乳がんをうまく克服して行けるように職場や病院などの社会としてもサポートしていきたいものです。

 なお、働く女性の乳がん治療を応援するために夜間の抗癌剤治療外来を行っている病院もあるようです。仕事が終わってから無理なく治療が受けられるようにと配慮されているのですね。こういった病院側のサポートもこれから少しずつ増えていくのではないでしょうか。

 次回からは乳房再建の話になりますが、乳房再建はさらに、自分の都合に合わせた治療や方法が選択できます。気持ちも前向きになる乳房再建、是非より多くの方に知ってもらいたいと思います。

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