2020年11月18日

お寺で、がんカフェ。 宗教を問わず、不安や悩みを抱える人たちの居場所として

キーワード:ライフスタイル
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「もっと患者さんの人生にふれたい」という想い、きっかけに

 埼玉県のJR三郷駅からほど近い住宅街の中にありながら、境内には自然が多く残る高応寺。東屋に腰掛け、虫の声や水の音に耳を傾けていると、自然と心が落ち着きます。

四季折々、美しい表情を見せる高応寺の庭は、近隣の人の憩いの場でもある

 毎月第4土曜日に高応寺で開催されているがんカフェ。主宰するアカシア訪問介護ステーションの所長で、看護師の川上貴子さんに、このがんカフェをはじめたきっかけをうかがいました。

 「がんカフェを始めたのは8年前のことです。その当時、市内の病院の緩和ケア病棟で看護師長をしていたのですが、多くのがん患者さんやご家族と接し、看取るなかで、不安や悩みを抱え込んでしまう人が本当に多くて、なんとかしたいなと。患者も遺族も気軽に訪れて、ホッとできる場所があったらいいと思ったのです」(川上さん)

高応寺のがんカフェを立ち上げたアカシア訪問看護ステーションの川上貴子所長

 「看取りをするということは、医療者にとっても、たやすいものではありません。どういう生き方をしたいのか、またどういう死に方をしたいのか。私自身、関わらせていただいた患者さんの話をもっと聞きたかった。その人生にふれたかった。しかし医療現場だけでは限界があります。だから私たち医療者も参加して、みんなでもっと想いを語りあえる、がんカフェを始めようと決めました」(川上さん)

 お寺という場所を会場にすることになったのは、全くの偶然だったといいます。

 「最初はがんカフェに関係なく、酒井住職に講演をお願いしようと訪ねていったのです。そこで『がんカフェをやりたい』と思っている」という話を何気なくしたところ、『私もやりたい。料金とか要らないから、ぜひお寺を使って』と言ってくれたのです」(川上さん)

「宗教・宗派を問わず、お寺をもっと身近な場所に」と多彩な活動をする高応寺の住職・酒井菜法さん

当時のことを、住職の酒井菜法さんにも尋ねると「川上さんとお会いした時、その人柄に一目惚れしてしまって、まずそれが一番です。それから『お寺って、こちらから開かないと外の人たちとつながらない。町の風景のひとつではなく、宗教・宗派を問わず、みなさんが気軽に足を運び、祈ることができるお寺にしたい』と日頃から考えていて、ちょうどその頃、臨床宗教師の勉強を始めたり、ベビーマッサージやヨガなどのイベントを開催したりするようになっていました。川上さんの考えているがんカフェは、私が抱いていた想いとぴったり合うものだったので、『ぜひに』とお願いしました」(酒井住職)

悲しみを分かち合える場の大切さ

 がんカフェの参加者は、毎回20名ほど。患者さんや遺族の方、医師、看護師といった医療者とその立場は様々です。会の最初は川上さんが参加者に声をかけて、初めての人でも話しやすい雰囲気を作っていきます。

川上さんの笑顔と声かけで参加者の緊張もほぐれていく

 続いては2グループに分かれて、おしゃべりを。現在は新型コロナ感染症への対策でお茶やお菓子は出していませんが、マスクをし、みなさん距離感を保ち、穏やかな時間が過ぎていきます。病気のことや、亡くしたご家族への想い。またコロナ禍における日常生活の悩みや不安、そうした中でどういう楽しみを見つけているかなど、話題は多岐にわたります。

会の途中からは2グループに分かれて、患者も遺族もそれぞれの想いを語り合う

 参加者のGさんは、がんに罹患したご主人の介護がうまくいかず、うつ病になりながらも看取った経験を語ってくれました。その後、ご主人を亡くしたGさんは、悲しみを抱えたまま何年も家に引きこもり、不眠症など体調不良に悩まされることに。そうした中、ご主人の訪問介護で縁のあった川上さんが、がんカフェをやっていることを知り、月に1回、顔を出すようになったといいます。

 「夫ががんばって生きてくれたから、ご縁があって、今、この場にいることができるのだと感謝しています」

 Gさんの言葉に、患者だけではなく、家族もまた大変なのだということに、改めて気づかされます。また同時に、悲しみを分かち合えるこうした場が果たす役割の大きさを実感しました。

じっくりと参加者の話に耳を傾ける酒井住職

 会の後半からは酒井住職も参加。相槌やちょっとした言葉をかけますが、あくまでも聞き手に徹しているように見えます。

 「仏教のことを尋ねられればお答えはしますが、このがんカフェでは私は場を提供しているだけなので、説法もしません。主宰は川上さんやアカシア訪問看護ステーションの方たちであり、主役は参加者のみなさんですから」(酒井住職)

会の締めくくりは、酒井住職による瞑想の時間

 参加者のお話を聞いているうちに、あっという間に2時間がたち、最後は酒井住職による瞑想の時間で会は締めくくられました。帰路につくみなさんの、楽しげで清々しい表情が印象的でした。

■がんカフェ@高応寺
 毎月第4土曜14:00〜16:00
 次回は、11月28日(土)開催です。(※参加費無料)

 問い合わせ先:アカシア訪問看護ステーション  TEL:048-950-1250
日蓮宗 三郷 高応寺

■取材 ・文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。    
(日本医療・健康情報研究所)

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