2020年10月29日

トリプルネガティブ乳がんの再発を防ぐ治療薬を 臨床試験のためのクラウドファンディングが2020年10月よりスタート⑴

キーワード:治療
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 がん細胞に2種類のホルモン受容体、HER2タンパクのいずれも存在しないトリプルネガティブ乳がん。乳がんの10〜15%を占め、薬物療法で使えるのは抗がん剤のみ。また増殖能力が高く、再発率が高い傾向にあります。

 そうした中、卵巣がんや肺がんに使われてきた「カルボプラチン」という抗がん剤がトリプルネガティブ乳がんの再発防止に有効である可能性が高いことがわかりました。

 「治療薬が限られているトリプルネガティブ乳がん患者さんに、1つでも多くの選択肢を提案したい」として、神戸大学医学部乳腺内分泌外科特命教授、国際がん医療研究センター副センター長の谷野裕一先生が、カルボプラチンの有効性を確認する臨床試験の資金の一部を集めるため、2020年10月12日より専門サイトの「READY FOR」にてクラウドファンディングを始めました。

トリプルネガティブ乳がんの治療、再発を減らす薬が期待される背景

 乳がんの10〜15%を占めるトリプルネガティブ乳がんとは、ホルモン受容体の「エストロゲン受容体」と「プロゲステロン受容体」、そしてHER2タンパクの3つが陰性であることから「トリプルネガティブ乳がん」と呼ばれています。

 ホルモン受容体が陽性であればホルモン療法が、HER2タンパクが陽性であれば分子標的治療薬(抗HER2薬)が治療薬として有効ですが、トリプルネガティブ乳がんの場合は効果がなく、薬物療法で使えるのは抗がん剤のみです(BRCA遺伝子変異陽性乳がんであれば、分子標的治療薬のオラパリブが使用できますが、使用できる患者さんはごくわずかです)。

 つまり薬物療法の選択肢が少ないことが、トリプルネガティブ乳がんの治療における大きな課題といえます。

 そのほかトリプルネガティブ乳がんは下記の特性を持ち、ほかの乳がんと比べて再発した場合の予後が良くないという傾向があります。

・増殖能力が高い
・3年以内の再発率が高いが、3年を超えると再発率が低くなる
・20〜40代と、若い世代に多い

 「現在、トリプルネガティブ乳がんにおいては『アンスラサイクリン系』と『タキサン系』を使った抗がん剤治療が最も効果的で、術前または術後に行いますが、抗がん剤が効かない人は再発率が高い。

 そして再発した場合も、『アンスラサイクリン系』と『タキサン系』以外に再発を減らす薬がないため、この2種の抗がん剤で効果が見出せなかった再発の患者さんは治療法に行き詰まってしまうのです」と話すのは、神戸大学医学部乳腺内分泌外科特命教授で国際がん医療研究センター副センター長の谷野裕一先生。

神戸大学医学部の谷野裕一特命教授

 「再発して亡くなる可能性の高いトリプルネガティブ乳がんの患者さんを救いたい」。約10年前、谷野先生は再発を減らすための治療法として、卵巣がんや肺がんの治療に使われてきた抗がん剤「カルボプラチン」に注目しました。

 「カルボプラチン」は現在、乳がんでは転移再発のHER2陽性乳がんのみ保険適用とされていますが、初発の乳がんにまで保険適用を拡大するためには、さらなる臨床試験が必要となってきます。

 「今回の臨床試験で、トリプルネガティブ乳がんの再発防止に対するカルボプラチンの有効性が示され、治療に使えるようになれば、トリプルネガティブ乳がんで亡くなる患者さんを毎年1000人近く救うことが予想できます」(谷野先生)

 しかし医師主導で臨床試験を行うのは、多額の費用がかかることもあり簡単ではありません。谷野先生は約10年もの間、道を模索し、奔走を続けてきました。2020年4月、臨床試験の開始に漕ぎ着けることができましたが、未だ資金面は厳しく、一部をクラウドファンディングで募ることになりました。

 事前申し込み不要、当日は特設ページに入口が表示されるので、そちらから各会場のプログラムを選択して自由に視聴できます。

 次回は、「第2回目」をお届けします。

クラウドファンディング専門サイト READY FOR  「トリプルネガティブ乳がん:再発を防ぐ治療薬、確立のための臨床試験を」

■取材 ・文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。
(日本医療・健康情報研究所)

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