2020年10月22日

通院や治療に対する不安を軽く オンライン市民公開講座「コロナ禍における乳がん診療」⑴

キーワード:ライフスタイル 治療
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 ちまたに新型コロナウィルスに関する情報があふれる中、感染や重症化の不安から通院を後回しにしている人が増加しています。

 認定NPO法人キャンサーネットジャパンは、コロナ禍における乳がんに関する情報を整理して届けることで、乳がん患者さんの不安を少しでも軽減することを目的に「オンライン市民公開講座 コロナ禍における乳がん診療〜乳がん診療・治療の機会を逃さないために」(共催:日本イーライリリー株式会社)を2020年10月3日に開催。

 乳がん患者さんをはじめとする333人がオンラインで参加しました。

乳がん患者さんが衝撃を受けた岡江久美子さんの訃報と、各学会の対応

 この講座は2部構成となっていて、前半は、福島県立医科大学の腫瘍内科学講座主任教授の佐治重衡先生が登壇。「コロナ禍における乳がん治療でおきたこと」と題し、講演が行われました。

福島県立医科大学腫瘍内科学講座の佐治重衡主任教授

 冒頭には、4月23日に新型コロナウィルス肺炎のために亡くなられた俳優の岡江久美子さんについて、影響の大きかったニュースとして挙げた佐治先生。

 「昨年末に初期の乳がんで手術を受け、今年1月末から2月半ばにかけて放射線治療を行っていたということで、事務所は免疫力が低下していたことが重症化した原因ではないかとしている」と複数の大手メディアにより報道されたことは、多くの乳がん患者さん、特に放射線治療中の患者さんたちの不安をあおりました。

 それに対し、日本乳癌学会理事長が「早期の乳がんの術後に行う放射線治療で、新型コロナウイルスによって重症化する原因になるほど免疫力が下がるとは考えにくい」とコメント。2日後には日本放射線腫瘍学会からも「早期の乳がん手術後に行われる放射線治療は、体への侵襲が少なく、免疫機能の低下はほとんどありません」と発表がありました。

 また4月下旬以降から新型コロナウイルス流行下の診療について、各学会から指針が出され始めました。日本臨床腫瘍学会からは医療従事者に対するものと合わせて、がん患者さん向けのものも発表。

 「コロナ流行下において検査や手術、術後の化学療法など、どうすればいいのか」といった点についてQ&A形式で作成され、現在も日本臨床腫瘍学会のWEBサイト上で紹介されています。

日本臨床腫瘍学会「がん診療と新型コロナウイルス感染症:がん患者さん向けQ&A」

コロナ禍の治療の優先度について日本乳癌学会が指針作成。すでに開始されている薬物療法は延期できない「高優先度」に

 5月25日には、新型コロナウイルス流行下において、乳がん患者さんの生命予後に悪影響を出さずに治療を進め、さらには患者と医療者を感染から守ることを目的に、日本乳癌学会総務委員会から「COVID-19に伴う乳癌治療のトリアージについて(指針の作成)」が発表されました。

 これは新型コロナウイルス流行の状態により人員や手術室といった医療資源が不足し、病状の緊急度に応じた対応が必要となった場合、診療行為を下記の3段階に分けた指針です。

 ●A.高優先度:できる限り通常通りの迅速な対応を要する
 ●B.中優先度:治療の遅延が後に生存に影響を与える可能性がある
 ●C.低優先度:緊急性はなくパンデミックの期間中は延期することができる

 外来診療、画像診断、外科療法、放射線療法、薬物療法と分けられ、それぞれについて細かく優先度が示されています。

 例を挙げると[外来診療]のカテゴリーで、「乳癌検診」はC.低優先度、「臨床上悪性が確実な症例の確定診断」はA.高優先度となっています。

 また[薬物療法]のカテゴリーでC.低優先度となっているのは、「骨転移に対する骨吸収抑制薬」と「ポートフラッシュ」。A.高優先度には「トリプルネガティブまたはHER2陽性乳がんに対する術前・術後化学療法」、「すでに開始されている術前・術後治療の継続」などが含まれています。

延期されてきた乳癌検診も、コロナ対策の上で再開

 日本乳癌学会の指針において乳癌検診は低優先度となっており、多くの検診が延期されてきましたが、流行の終息までにはまだ時間がかかることが考えられます。

 日本乳癌検診学会では、適切な感染拡大防止対策を施したがん検診提供体制の整備を目的に、「乳がん検診にあたっての新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応の手引き」を6月に作成、全国において乳癌検診の再開が始まっています。

日本乳癌検診学会「乳がん検診にあたっての新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対応の手引き」

 講演の結びとして、「この春、外来診療や手術など緊急性の低いものについては減らすことができたが、抗がん剤治療と血液透析は減らすことができなかった。必要な医療は減らすことはできない。リスクと利益のバランスをできるだけ正しく把握し、今後もリスクを減らす努力を続けながら治療を行っていくことが大事だと思います」 と話した佐治先生。

 新型コロナウイルス感染症という全くエビデンスのない未曾有の事態に直面しながらも、医療者によって乳がん患者さんを守るための様々な対応が進められていたことがよくわかる講演でした。

認定NPO法人キャンサーネットジャパン

■取材 ・文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。
(日本医療・健康情報研究所)

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