2020年05月27日

【書籍紹介】乳房温存術の後でも、乳房再建はできる? 形成外科専門医が伝えたい「改訂新版 もっと願いをかなえる乳房再建」

キーワード:乳房再建 治療
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10人に1人が乳がんになる現在 知っておきたい「乳房再建」

 女性にとって乳がんという病気が決して他人事ではないということを、今や多くの人が感じていると思います。国立がんセンター「がん情報サービス」の最新がん統計によれば、女性が生涯で乳がんにかかる確率は10人に1人となりました。

 「もし乳がんにかかったら、乳房を失ってしまうのでは」と大きな不安をみなさん感じることでしょう。乳がん治療の手術によって、失われた乳房、もしくは変形した乳房を形成外科の技術によって新しくつくるのが「乳房再建」です。

 乳房を失うことは女性の心にとって非常に大きな問題です。「命が助かればそれでいいじゃないか」という時代は終わり、乳房再建をするのかしないのか、乳房再建をするのであれば「いつ」「どこで」「どの方法で」行うのかを患者自身が考え、選択していく必要がでてきています。

 手術後に乳房再建をどう進めるのかまで考えて、治療法を提案してくれる乳腺外科医も増えつつあります。治療法とともに乳房再建の現状についてもあわせて知っておくことが、患者にとって大切です。

書籍紹介「改定新版 もっと願いをかなえる乳房再建」

 当サイトの、乳がん治療の最前線で活躍する医師や保健指導スタッフなど各領域に精通した専門職の方による意見・提言を掲載する「オピニオン」のコーナーにも登場していただいた、セルポートクリニック横浜医師、杏林大学形成外科非常勤講師の辻直子先生。

■辻直子先生の「オピニオン」連載記事
「働く女性と乳がん -がん治療と乳房再建のいま-」

 著書「改訂新版 もっと願いをかなえる乳房再建」(現代書林発行)は、乳がん治療の基礎知識と乳房再建について、医療の知識がない人でもわかりやすい文章でまとめたものです。

【書籍紹介】
 「改訂新版 もっと願いをかなえる乳房再建」
 著者:辻 直子
    (セルポートクリニック横浜医師/杏林大学形成外科非常勤講師)
 発行:現代書林
 定価:1,200円+税
 頁数:128ページ

 詳細は現代書林ホームページ

再生医療を活用した、最新の乳房再建術「CAL組織増大術」

 本の後半では、再生医療「CAL(キャル)組織増大術」を用いた乳房再建術を紹介しています。今回は、PART3「自分の脂肪と幹細胞を使う「CAL組織増大術」(p.91~p.93)より、内容を抜粋してご紹介します。

(※CAL...自分の幹細胞を使う医療技術「CAL(Cell Assisted Lipotransfer)組織増大術」であり、セルポートクリニック横浜と東京大学医学部形成外科との共同開発により生まれた新しい脂肪注入術。)

【乳房温存後の乳房再建】
 「乳房温存術後の再建は、欠損の位置や程度が人それぞれなため、形や量の調節が可能 な皮弁移植(主に広背筋皮弁)で行われるのが主流でした。この方法であれば1回で確 実にボリュームアップできるという利点はありますが、やはり皮弁の採取部にきずあと ができますし、小さい皮弁でも最低1週間は入院が必要になってきます。」

 「CALは乳房温存術後の陥凹に幹細胞を加えた脂肪を注入することで、変形を改善で きます。脂肪を入れて膨らませるのは比較的イメージしやすいですね。温存術後の再建 にもCALは他にはない優れた点があります。それは、次の2つです。」

【①傷が増えず、低侵襲な再建が可能】
 「これまでにも述べてきたように、CALはほとんど切開を行わずに、つまり新しい傷を増やさずに再建が可能です。乳房温存術後の場合は特に注入する脂肪の量も多くはな いですから、ほとんどの場合で日帰り手術が可能です。ほんの少しのへこみが気になる から治したい、でもそのために1週間以上も入院して大きな傷を作るのは抵抗がある、という方にも再建への一歩が踏み出しやすいのではないでしょうか。」

【②放射線照射後の組織を改善する効果】
 「乳房温存術は通常、手術後の放射線照射治療がセットになっていますので、たいていの場合、乳房の傷とその周りは固く萎縮した状態になっています。皮膚の色も、茶色に 変色してしまっていることもあります。この変化は放射線の影響で起こり、長い間残るものですが、CALではそこに脂肪と幹細胞を補充することでこれらの変化からの回復を促す効果が期待できます。固かった部分が柔らかくなったり、皮膚の色が改善したりする方も多くいらっしゃいます。 この効果は他の再建方法では得られないので、乳房温存術後こそCALでの乳房再建が適しているといえます。」

 「乳房温存術後で変形の程度が強い場合や、傷跡が非常に固い、癒着が強い場合などは一度のCALでは完全に変形が修正できないことがあります。それでも1回目のCAL で生着した脂肪とその幹細胞の効果で注入部分の状態は改善していますので、一定の時間をあけてCALを行うと、より健側の乳房に近づけることができます。変形の中でも 引きつれが強い場合は同時に瘢痕修正などを組み合わせた治療も可能です。」

 「乳房温存術後のCALを行う時期については、放射線治療後、組織が落ち着いた状態になってからが効果を最大限に発揮できます。最低1年は待ってから治療を開始し、2 回目を行う場合は、やはり組織の状態を見て半年から1年はあけて次の治療を行うよう にします。もちろん自分の脂肪ですから、なだらかで自然な手触りの乳房再建が可能です。」

オピニオン「働く女性と乳がん-がん治療と乳房再建のいま-」
「改訂新版 もっと願いをかなえる乳房再建」(現代書林)

■取材・文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。
(日本医療・健康情報研究所)

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