2019年09月10日

AIで乳がんの5年後の発症リスクを予測 マンモグラフィ検査の精度を大幅に向上

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 AI(人工知能)を使った、5年後の乳がんの発症を予測できる深層学習ベースの新たな予測モデルを、マサチューセッツ工科大学などの研究チームが作り出した。
 人の目だけでは分からない、悪性腫瘍の前兆となる乳房組織の微妙なパターンを見分けられるという。
 この予測モデルを使えば、マンモグラフィ検査の精度を大幅に向上できると期待されている。

AI(人工知能)を活用して乳がんリスクを予測

 研究は、米マサチューセッツ工科大学(MIT)のコンピュータ科学・人工知能研究所(CSAIL)や、マサチューセッツ総合病院などの研究チームによるもの。

 がんの画像診断による検査や遺伝子医学は大きく進歩しているが、乳がんを早期発見できず治療開始が遅れるケースは依然として多い。

 これまで、乳がんリスクの予測には、年齢、ホルモンや生殖要因、乳腺濃度、乳がんの家族歴など特定の因子を考慮した手法が用いられてきた。とくに家族歴は重要で、乳がんの5~10%は遺伝性であるとされている。

 しかし、現行の主に年齢層で乳がんリスクを予測するモデルは精度に限界がある。そこで、研究チームはAI(人工知能)技術を活用した乳がんリスクの予測モデルの構築を試みた。

マンモグラフィ検査を効果的に受けられるようになる

 マンモグラフィ検査が乳がんによる死亡率を低下させることが示されているが、どのくらいの頻度でいつ開始するかについては議論がある。

 米国がん学会は45歳からの年1回のスクリーニングを推奨しているが、米国予防対策委員会は50歳から2年ごとのスクリーニングを推奨している。

 「AIにより乳がんの発症リスクがあらかじめ分かれば、乳がん検診を個別化し精度を高めることが可能になります」と、MITのレジーナ バージレー教授は言う。

 「たとえば、あるグループの女性はマンモグラフィ検査を2年に1回受けることが推奨されますが、リスクの高いグループは、MRI検査を補助的に受けることが勧められるといった具合に調整できるようになります」。

予測精度が大幅に向上

 研究チームはまず、マサチューセッツ総合病院で治療を受けた3万9571人の女性のマンモグラフィ画像6万886件を調べ、5年以内に乳がんを発症した画像データを選出した。

 そして、脳の神経回路の仕組みを模した「深層学習(ディープラーニング)」を用いてこのデータを読み込ませ、AIにより乳がんの初期の兆候となる乳房組織のわずかな変性を識別するプログラムを構築した。

 画像を「従来のTyrer-Cuzick(TC)法」「ディープラーニングによる診断(DL)法」「TC法とDL法を組み合わせたハイブリッドDL法」の3種の手法ごとに分析して乳がんの予測精度を検証した。

 その結果、従来のアプローチでは乳がんのステージの進んだ患者を18%しか予測できなかったのに対し、開発したプログラムでは予測精度が31%に向上した。
 アジア系の女性は乳がんの罹患年齢が若いがん検診を行う放射線科では、マンモグラフィ画像に広範囲に変化する目に見える独特の乳房組織のパターンがあることは、1960年代から分かっていた。

 「これらのパターンに、遺伝子、ホルモン、妊娠、授乳、食事、体重の増減などが影響します。その詳細な情報にもとづくリスク評価を、個人レベルでより正確に行えるようなりました」と、ハーバード大学のコンスタンス リーマン教授は言う。

 この技術はがん検診の人種による格差の解消にも役立つ可能性がある。AIにあらゆる人種のマンモグラフィ画像を学習させることで、均等に乳がんを検出できるようになるという。

 アフリカ系の女性は白人女性に比べて乳がんの死亡率が43%高く、アジア系の女性は白人女性よりも乳がんの罹患年齢が若い傾向があることが知られている。

 他のがんや心血管疾患などのリスクを医師がマンモグラフィ画像から予測するといった応用も考えられる。バージレー教授らは、膵臓がんのような早期発見の難しいがんににまで、この技術を拡張することを考えている。

Using AI to predict breast cancer and personalize care(マサチューセッツ工科大学 2019年5月7日)
A Deep Learning Mammography-based Model for Improved Breast Cancer Risk Prediction(Radiology 2019年5月7日)
(日本医療・健康情報研究所)

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