2019年02月27日

すべてのがん患者は運動を治療として行うべき 運動が乳がん患者のQOLを改善 欧州臨床腫瘍学会

キーワード:ライフスタイル 治療
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 すべてのがん患者は、運動の習慣化をがん治療の一部として行うべきだと、がん治療の専門医らは主張している。これらの研究は、2018年10月にドイツ・ミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO)の年次学術集会で発表された。

運動ががん患者の症状管理や生活の質(QOL)を改善

 がん治療の一環として運動やスポーツを行うことで、治療中および治療後の症状管理や、生活の質(QOL)が向上し、健康状態も大幅に改善されることがフランスの研究で明らかになった。QOLの低いもっともリスクの高い患者でも、運動による改善効果は大きいという。

 フランスでは、パリなどのがんセンター80ヵ所以上で、毎年3,500人以上のがん患者が運動プログラムに参加している。その費用は患者1人あたり約5万円(400ユーロ)だという。「運動プログラムに参加するがん患者の数は増え続けています」と、イル=ド=フランス地域圏にあるアメリカンホスピタルの腫瘍学専門医のティエリ ブイエ氏は言う。

 運動クラスは、がんとその治療について専門的な知識をもつトレーナーによって運営されており、個々の患者のニーズに適合した運動プログラムが提供されている。

 「化学療法あるいは放射線療法を行う6ヵ月間に、少なくとも週に2~3回の運動を1時間行い、その後は運動が生活の一部になるように指導すると、がん患者が得られるベネフィットは最大になることが分かりました」と、ブイエ氏は言う。

 「20年の経験で分かったのは、情報や運動プログラムを提供するとき、医療機関などで行った方が、患者は手軽で安全に感じやすいということです。病院を離れた運動クラスで、がん患者が抱く特別のニーズについて良く理解していないトレーナーに教えられるよりも、その方が利点が多いのです」と、ブイエ氏は付け加えている。


運動により乳がんの疼痛と疲労のスコアを83%減少

 フランスのリールにあるオスカー ランブレ センターなどで行われた研究では次のことが明らかになった。

 (1)がん治療を受けている114人の患者を対象に、筋力トレーニングと有酸素運動を1回60分、週2回行うことで、3ヵ月後および6ヵ月後の疼痛と疲労のスコアが、乳がんでは83%、転移性がんでは21%、それぞれ有意に減少した。ベースライン時および6ヵ月時のデータのある71人の患者では、疲労スコアは3.1から2.1に(p<0.05)、疼痛スコアは3から1.9に(p<0.05)、それぞれ低下した。

 除脂肪体重は安定したまま、体脂肪も大幅に減少した。グループ全体では、脂肪量がベースライン時の33.9%から3ヵ月後の33.2%まで減少した一方で(p<0.05)、除脂肪体重は安定したままだった(それぞれ43.6kgと43.8kg)。

 6ヵ月時のデータのある71人の患者では、脂肪量は34.3%から32.4%に減少したが、除脂肪量は両方の時点で42.8kgと変わらなかった。さらに、大腿四頭筋の持久力、両腕の強さ、および脚のバランスの観点から全体的な適応度に有意な改善がみられた(p<0.05)。

 「多くの患者は、がんと診断される前に、筋肉を失い疲労することが多いので、最初の診察の後できるだけ早く運動を開始することが必要です。運動を初期症状における"応急処置"とみなすべきです。治療を進んでからは副作用を緩和する効果も得られます」と、ブイエ氏は言う。

運動が乳がん患者のQOLを改善 リスクの高い患者でも効果

 (2)2番目の研究では、治療中に生活の質(QOL)が低下する危険性のもっとも高い患者でも運動には効果があり、支援を追加する必要があることが実証された。この研究は、補助的な化学療法を受けているI期からIII期の乳がん患者2,525人を対象に行われた。

 研究では、1週間に150分の中強度の運動、あるいは75分の高強度の運動を続けた乳がん患者は、運動をしなかった患者に比べ、6ヵ月後および12ヵ月後のQOLが有意に改善することが示された。運動をした患者では、身体的幸福が大きく改善し、疲労、痛み、息切れなども少なかった。

 高強度の運動として、エアロビクスダンス、活発なガーデニング作業、速めの水泳などの身体活動が含まれ、中強度の運動には、活発なウォーキング、水中エアロビクス、バレーボールなどでが含まれた。

 「運動をした患者は、約60%が化学療法の前後で身体的に活動的であり、そうした患者のQOLは化学療法によって低下するものの、運動をしない患者に比べ、さまざまな身体的・感情的・症状のスコアの得点は一貫して良かった」と、グスタフ ルッシーがん研究所の腫瘍内科医であるアントニオ ディ メリオ氏は言う。

 研究では、乳房切除術を受けた患者、他に病気を合併している患者、喫煙習慣があったり、低収入の患者では、とくに乳がんの化学療法後によりQOLが低下するリスクがあるが、運動の恩恵は大きいことも示された。

 「新しいアプローチにより、化学療法によってQOLが受けやすい乳がん患者を特定することも可能であることが示されました。そうした患者に集中的な介入を行い、運動量をWHOが推奨するレベルまで増やすことが考えられます」と、ディ メリオ氏は指摘している。

移転性乳がんについての大規模なコホート研究も

 「これらの研究で示されたことは、運動療法をがんサバイバーのための標準的治療の一部として行うべきだということです。運動の重要性については、過去の臨床試験でも示され、欧州臨床腫瘍学会も推奨しています」と、オランダがん研究所のゲイブ ゼンケ氏は言う。

 現在、英国のインスティテュート オブ キャンサー リサーチが中心となり、欧州の20ヵ国が参加し移転性乳がんについての大規模なコホート研究が行われている。運動の効果についても調査される予定だ。

 「運動プログラムは、その初期においてがん患者の化学療法と放射線療法へのアドヒアランスを改善し、治療アウトカムを改善する可能性があります。これらの研究は、保険会社が運動イニシアティブを支援するのを奨励するためにも役立ちます。運動ががん患者の予後を改善し、医療費を減らすのに役立つことを実証する必要があります」と、ゼンケ氏は指摘する。

 「運動プログラムに参加するがん患者は、すでに活発に体を動かすことを習慣としている人が多い傾向があります。それ以外のふだんは活発ではない患者や、低所得などの理由で不健康な生活スタイルをもつ患者なども、化学療法を受ける期間中に運動によるベネフィットを受けられるよう支援する必要があります。がん治療に運動を含めるメリットを明らかにするために、さらに多くの研究が必要とされています」と、ゼンケ氏は結論している。

Regular exercise should be part of cancer care for all patients(欧州臨床腫瘍学会 2018年10月20日)
Benefits of Physical Activity and Sport integrated into the care pathway of oncology patient(Annals of Oncology 2018年10月1日)
Physical activity (PA) and patterns of quality of life (QOL) after adjuvant chemotherapy (CT) for breast cancer (BC)(Annals of Oncology 2018年10月8日)
Global recommendations on physical activity for health(世界保健機関)
ESMO Handbook on Rehabilitation Issues During Cancer Treatment and Follow-Up(欧州臨床腫瘍学会)
(日本医療・健康情報研究所)

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