2019年02月20日

腫瘍内科医が語る、抗がん剤治療の現在 映画「がんになる前に知っておくこと」トークイベント

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 ――――― 15人の医療従事者などとの対話を通して、現在のがん治療を描くドキュメンタリー映画「がんになる前に知っておくこと」。

 2月9日、映画上映後のトークイベントに、日本医科大学武蔵小杉病院・腫瘍内科教授の勝俣範之先生が登場。三宅流監督の質問に答える形で、抗がん剤治療の現在について語りました。

吐き気は薬で抑えられる 抗がん剤治療は通院でできる時代に

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日本医科大学武蔵小杉病院・腫瘍内科教授の勝俣範之先生(左)と
映画「がんになる前に知っておくこと」の三宅流監督(右)

 三宅監督 撮影の時に勝俣先生から「抗がん剤は130種類くらいある」とお聞きしたのですが、今はもっと増えているのでしょうか?

 勝俣先生 抗がん剤は日々進歩していて、2019年になってまだ1ヶ月ですが、すでに1〜2剤、新しい抗がん剤が増えています。「抗がん剤=毒」というイメージを持っている人が多いですが、すべてが毒かというとそうではありません。最近の抗がん剤は植物由来や海産物由来といった「自然由来」のものが多いんです。

 実は自然界にはがんに効く成分があって、それを抗がん剤として開発する形が増えているのですが、一般には知られていないですね。ビタミン由来の抗がん剤もあって、白血病の治療に使われています。

 三宅監督 「患者さんのQOLを下げないように抗がん剤治療を行う」と映画の中にもありましたが、副作用のマネージメントはどのようになさっているのでしょうか。

 勝俣先生 代表的な副作用に吐き気や食欲不振がありますが、吐き気を抑える薬が、この20年くらいで大きく進歩しまして、9割くらいの人の吐き気は抑えられるようになりました。

 30年前、私が医者になった頃は、吐き気で1ヶ月寝たきりという人もいましたが、今は入院の必要はありません。通院で治療をして、仕事もできる時代です。食事もいつも通りできます。

 ただし抗がん剤は効果も副作用も個人差がありますので、副作用の出やすい人には、予防薬を使うこともできます。抗がん剤治療と合わせて緩和ケア的な支持療法を行うことが大切ですし、今は大変に進歩しています。

日本以外の先進国では、腫瘍内科医が抗がん治療を行う

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 勝俣先生 腫瘍内科医は抗がん剤治療の専門家です。日本以外の先進国では腫瘍内科医以外が抗がん剤を処方することはできません。しかし日本には腫瘍内科医が少なくて、1200人ちょっと。アメリカの14分の1くらいです。

 100万人くらいいる日本のがん患者さんすべてを腫瘍内科医が診るには少なすぎるので、9割の患者さんに対しては外科の先生が処方しています。

 三宅監督 腫瘍内科に診てもらいたい時にはどうすればいいですか。

 勝俣先生 腫瘍内科のある病院も少なく、がんの専門病院でも腫瘍内科医がいないというところが多くあります。病院のWEBサイトにはいるかどうかが書いてありますので、もしかかっている病院で腫瘍内科医がいない場合は、セカンドオピニオンで利用するのもいいかと思います。

検診が向かない「がん」もある

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映画の中で、女優の鳴神綾香さんと対話する勝俣先生

 三宅監督 がんを早期で見つけるためには、まめにいろんな検診を受けた方がいいのでしょうか。

 勝俣先生 今は「早期発見・早期治療」を過剰に言い過ぎている傾向にあると思います。すべてのがんが早期発見できるかというとそうではありません。がんにはそれぞれスピードがあって、スピードが早いがんの場合、年に1回、または半年に1回検査をしたとしても早期発見は難しい。

 例えば、白血病は1〜2ヶ月であっという間に進んでしまうので、検診は全く無効なわけです。白血病のような血液のがんではなく、肺がんや乳がん、大腸がんといった固形がんに対して、盛んに「検診を受けましょう」と言われていますが、中には非常にスピードの速いものもあり、そうした場合、早期発見は難しい。

 「検診を受けているから大丈夫」ではなく、検診が向かないがんもあることも知っておいてほしいですね。そして、見つかったあとにしっかりと標準治療を受けることが大切です。

■ドキュメンタリー映画「がんになる前に知っておくこと」
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東京・新宿K's cinema、川越スカラ座(ともに3月1日(金)まで公開)
ほか全国順次公開

■文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。
(日本医療・健康情報研究所)

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