2019年02月03日

がんになった人にも観に行ってほしい ドキュメンタリー映画「がんになる前に知っておくこと」

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15の対話を通して、がん医療や患者支援の現状をていねいに描き出す

21090203_01.png ナビゲーターである女優・鳴神綾香さんに「がんに関する情報発信」について話す、国立がん研究センター がん対策情報センター長の若尾文彦先生

 2月2日、ドキュメンタリー映画「がんになる前に知っておくこと」の公開が始まり、鑑賞してきました。(東京・新宿のK's cinemaほか全国順次公開)

 乳がん検診で腫瘤が発見され若手女優の鳴神綾香さん。結果的には良性だったものの、「がん」について何も知らない自分に気づき、もっと知りたいという想いで、がん治療に携わる医療従事者やがん経験者である15人と対話するドキュメンタリー映画です。

 登場するのは、外科医、腫瘍内科医、放射線治療医、緩和ケア医な、がん看護専門看護師といった様々な職種の医療従事者たち。

 漠然と「がんになったら終わり」というイメージを抱いていた鳴神さんに対し、がんについての正しい情報はどこで得られるのか、という話から始まり、がんにはどのような治療があるのか、体や心の痛みはどう対処したらいいのか、困った時はどこでサポートしてもらえるのかを、医療に詳しくない人でも理解できるよう、わかりやすく教えてくれます。

 そして3人のがん経験者との対話では、がんになった時に、人はどのようなことを思い、生きていくのかにふれていきます。

よりよい治療のために、自分がどう生きていきたいのかを考える

21090203_02.png 聖路加国際病院 相談支援センター・がん相談支援室で、医療連携とがん相談支援に関わる橋本久美子さん

 「がんになる前に知っておくこと」という映画のタイトルを見て、「自分はすでにがん経験者だから関係ない」と思う人もいるかもしれません。

 この映画に登場する医療関係者、がん経験者の方は、一般の人やサバイバーに向けてのセミナーやイベント,講演会などに数多く登壇されている方たちで、がん経験者に対する支援に力を入れている方ばかりです。

 たとえばセミナーに行ってみたいけれど住んでいる場所が会場から遠い、あまり時間がとれないという方でも、この映画に足を運んでもらえれば、がんに関する知識を得られるのはもちろん、対話の相手として登場するみなさんのがん治療やサバイバー支援に対する想いも感じ取り、心強く思えることでしょう。

 またサバイバーで情報をしっかり理解している人であれば「もう知っていることばかりなのでは」と思われるかもしれません。私自身も少なからずそういう気持ちを持っていたのですが、実際には多くの気づきがありました。

 一番印象に残ったのは、ご自身も乳がん経験者である東京女子医科大学放射線腫瘍科教授の唐沢久美子先生のお話です。

 「QOL(Quality Of Life)は『生活の質』と訳されることが多いですが、Lifeは人生という意味もあり、むしろ『人生の質』と考えるべきだと思っています。私はトイレに自分で行くことができなくても、パソコンを打ちながら仕事をできればいい。人にはそれぞれ生きがいや、やりたいことがあり、それを軸に治療を組み立てるべき。また医者は1%でも生存率を上げる方を進めるけれど、治療による副作用のつらさは患者本人にしかわからない。こうした患者個人の考え方や価値観を理解する医者が少ないことも、患者を民間療法に走らせてしまう一因となっているのでは」(唐沢先生)

 ただ長く生きるよりも、「人生の質」を長く保つためによりよい選択をしていきたい。そう思う人は多いはずです。がんの種類や病状によって選択肢の数は異なりますが、よりよい選択をするために「自分は何がしたくて、何が大切で、どう生きていきたいのか」ということを、がんになる前でも、そしてなってからでも考え続ける必要があるのだと、想いを新たにしました。

21090203_03.png がん経験者として登場する日本テレビ記者で「マギーズ東京」共同代表理事の鈴木美穂さん。24歳の時に乳がんと診断された。

 それから、家族や友人など、大切な人に、自分の病気をうまく伝えることができずにいる人に、ぜひこの映画を一緒に観に行ってほしいと思いました。もしかしたら一般の方にとっては理解するのが難しい部分もがあるかもしれません。それでも、きっと映画を見終わった後はこう感じてくれるはずです。

 「今やがんは共存できる病気であり、もしがんになったとしても、いろいろな支えがある」のだと。このことが伝えられるだけでも、観てもらう価値があると思うのです。

■ドキュメンタリー映画「がんになる前に知っておくこと」
2019年2月2日(土)より、東京・新宿K's cinemaほか全国順次公開

公式SNSアカウント
※2/2(土)〜 初日舞台挨拶、出演者によるトークイベントあり (東京・新宿K's cinemaにて、各日10時の回上映後、20分程度を予定)

■文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。
(日本医療・健康情報研究所)

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