2018年06月13日

「早期乳がん」の70%は化学療法は不必要 乳がん治療に明るい選択肢

キーワード:治療
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 初期ステージの乳がん患者の多くは、現在の治療では化学療法を受けているが、米国で発表された最新のがん研究で、もっとも一般的なタイプの乳がんの女性の70%には、その必要がないことが分かった。

早期乳がんの70%は「化学療法の必要なし」

 「TAILORx」試験は、がん治療を個別化する方法を探る目的で実施されている大規模試験。乳がんの治療を大きく転換させる可能性のある遺伝子検査だ。

 研究では、ホルモン受容体(HR)陽性、HER2陰性、腋窩リンパ節転移陰性というタイプの乳がんの患者では、化学療法とホルモン療法を併用した治療は、ホルモン療法を単独で行った場合に比べ有益ではないことが判明した。このタイプは早期乳がんのおよそ70%を占めるという。

 化学療法は患者の体に大きな負担がかかる。シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された新しい研究は、早期乳がんを発症した多くの女性患者の治療に影響する可能性がある。

 「TAILORx」試験は、ECOG-ACRINがん研究グループが実施しているもので、米国立衛生研究所(NIH)所管の国立がん研究所(NCI)の支援を受けて行われている。詳細は医学誌「New England Journal of Medicine」に発表された。

負担の大きな化学療法は本当に必要か?

 乳がんの治療にはホルモン療法に加え、化学療法を併用するかどうかの選択肢がある。

 第3相の臨床試験である「TAILORx」試験は2006年に開始された。ホルモン療法単独と、ホルモン療法と化学療法の併用の、どちらが優れているかを調べるのが目的だ。

 「TAILORx試験で示された新しい知見は、乳がんを発症した患者に対し、個別化した治療を推奨するのが望ましいことを示しています。これにより、より品質の良い治療を実現できます」と、アルバート アインシュタイン がんセンターおよびモンテフィオーレ ヘルス システムのジョセフ スパーアーノ氏は指摘する。

 「21種類の遺伝子を調べて、がん再発のリスクを評価することで、化学療法が利益をもたらさないと判定された場合、患者は不必要な治療を受けなくても済むようになる可能性があります」と、スパーアーノ氏は言う。

ホルモン療法単独と化学療法の併用を比較

 研究チームは、1万273人の早期乳がん患者の腫瘍組織の、21種類の遺伝子を解析し、それをもとに再発リスクを0~100のスコアで算出し、特にスコア11~25のグループに注目した。

 これまでの研究で、再発スコアが0~10の患者に化学療法は不要とみられる一方、スコアが26以上の患者は化学療法を加えることで再発率が下がることが示されていた。その中間にあたるスコア11~25の患者は、念のため化学療法を受けるケースが多い。

 「TAILORx」試験では、スコアが11~25の患者について、無作為に2つのグループに分け、一方はホルモン療法のみで治療、もう一方には化学療法を併用した。

 試験の目的は、ホルモン療法のみを受けた女性が、それに加えて化学療法を受けた女性と同等の治療成果を得られるかを評価することだ。

 治療5年後に再発がみられなかった率は、ホルモン療養単独のグループが92.8%、併用グループが93.1%、治療9年後には単独グループが83.3%、併用グループが84.3%となった。いずれも両方のグループでほぼ同じだったことが分かった。

 生存率も同様の結果になった。5年生存率は単独グループが98.0%、併用グループが98.1%だった。9年生存率はそれぞれ93.9%および93.8%だった。いずれもほぼ同じだった。

乳がんに個別化した治療を 最善の治療法を選択

 さらに、スコアが0〜10の女性はホルモン療法単独で9年目の再発率が非常に低いことも分かった。これは、従来の研究と同様の結果になった。

 また、化学療法とホルモン療法の両方を受けたにもかかわらず、スコアの26~100の女性では遠隔再発率が13%に上昇することが分かった。このことは、再発のリスクが高い女性のためにより効果的な治療法を開発する必要があることを示している。

 「これまでは、再発リスクの高い患者と低い患者では、効果のあるがん治療法を推奨することができましたが、その中間の患者では適切な治療戦略を決めるためのエビデンスが不足していました」と、NCIのがん治療評価プログラムを担当するジェフリー エイブラムス氏は言う。

 「化学療法は患者の体に大きな負担がかかります。今回の研究により、乳がんを発症したスコア11~25の女性で、化学療法とホルモン療法の併用療法を受けるメリットがないことが示されました」と、エイブラムス氏は指摘している。

 米国だけでも1年間に6万人の患者が、この発見による恩恵が受けられると予測されている。今回の研究は、乳がんの最善の治療法を決定し、医療者と患者をサポートするための、大きな足かがりになるという。

New approach to immunotherapy leads to complete response in breast cancer patient unresponsive to other treatments(国立がん研究所 2018年6月4日)
Adjuvant Chemotherapy Guided by a 21-Gene Expression Assay in Breast Cancer(New England Journal of Medicine 2018年6月3日)

(日本医療・健康情報研究所)

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