2017年12月20日

乳がんと妊娠・出産 Part.1
治療と妊孕性(妊娠する力)の正しい知識を

キーワード:ライフスタイル 治療
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乳がんの治療と妊娠についての正しい知識を!

 女性が若くして乳がんになった場合、妊娠・出産をどうするかは重要な問題です。

「乳がん治療をしても、妊娠・出産はできるのか」、「妊娠中や授乳中に乳がんが見つかった場合、出産は、治療は可能なのか」など、気になることがたくさんあります。

 特に近年は晩産化が進み、乳がんにかかりやすい年齢と妊娠・出産の年齢が重なる傾向にあります。高齢出産の場合、この妊娠を逃してしまうと今後妊娠できない可能性もあり、「出産か、治療か」という厳しい選択に迫られることもあります。

 将来出産を望んでいる女性が、乳がんの治療と妊孕性(妊娠する力)について、前もって正しい知識を得ておくことはとても大切。乳腺外科医の土井卓子先生 に、知っておきたいポイントを聞きました。

妊娠授乳期乳がんの特徴と乳がん検診

 妊娠授乳期に乳がんにかかった場合、どのようなことに気をつければよいのでしょう。妊娠授乳期のリスクや検診の受け方などについて紹介します。

----まず、妊娠中や授乳期に乳がんにかかる割合というのは、どれくらいなのでしょうか? 妊娠授乳期の乳がんが増えているというのは本当ですか。

土井先生 確かに妊娠授乳期の乳がんは増加傾向にあります。乳がんの患者数が増えていることや出産年齢が年々遅くなっていることなどが影響していると考えられますね。

 妊娠授乳期関連乳がんの定義は、妊娠中と授乳1年間ぐらいを指すと言われており、全ての乳がんの0.2〜3.8%くらいが、妊娠授乳期関連乳がんではないかと推測されています。妊娠可能年齢の乳がんに限ってみると、その割合は5%〜8%ぐらいになると言われています。 

----妊娠中や出産直後の女性の体では、多量のエストロゲン(卵胞ホルモン)が分泌されていますよね。それにより、乳がんの発症リスクが高まるといったことはあるのでしょうか。

土井先生 女性の一生で考えると、出産経験が多い女性のほうが乳がんにかかりにくいことがわかっています。ただ、出産直後や授乳中は乳がんのリスクが高まっていて、よく見つかるということもわかっているんですね。その理由についてはよくわかっていないのですが、いずれにしても、出産直後や授乳中は注意が必要ということです。

 また、かつては妊娠授乳期の乳がんは予後が悪いと言われていました。しかし、それは発見したときにすでに進行している場合が多いためで、病気の時期をそろえれば一般乳がんと変わらないことがわかってきました。

----「妊娠授乳期の乳がんは、発見しにくい」。だから注意すべきということですね。

土井先生 そうなんです。妊娠中や授乳期には、乳腺が発達してくるために、しこりがあっても気づきにくい。マンモグラフィやエコー(超音波)検査をしても、がんが映りにくく発見しにくいという特徴があります。

 また、そもそも乳がんの住民検診は40代以上が対象で、20代〜30代の妊婦さんでは、乳がん検診を自主的に受けるケースは少ないですね。それに、妊娠授乳期は乳房が張っていて痛みが強く、検査自体ができない場合も。ですから対策としては、結婚するときに婦人科でブライダルチェックを受けておく、出産前に一度、乳房のエコー検査を受けておくなどをお勧めします。

 ちなみに、妊娠中のマンモグラフィは、胎児被ばくをしないので差し支えありませんが、心配ならエコー検査で構いません。

 妊婦さんは、妊娠初期におっぱいケアを始める方も多いですよね。乳腺外科医としては、このとき、助産師さんには妊婦さんの乳房にしこりがないかどうかさわって見ておいてほしい。少しでも乳がん発見につながる機会が増えるとよいと思っています。

----ブライダルチェックとは? 

土井先生 一般には、将来出産を望んでいる女性が、自分の体が妊娠授乳に際して問題がないかを調べる検査プランのことを言います。婦人科などで実施されていて、自由診療になります。

妊娠授乳期の乳がん治療

そもそも、妊娠授乳期に乳がんの治療は可能なのでしょうか? 治療法の選択はどのように行われるのでしょう。

----妊娠授乳期に乳がんになった、あるは乳がんの治療中に妊娠がわかった。このような場合、妊娠の継続や治療は可能ですか。

土井先生 昔は、がんが発覚したら、治療に専念するのが一般的でした。しかし、現在では妊娠中に乳がんになっても、妊娠を継続しつつ治療を行い、出産することが可能になってきています。また、妊娠が乳がんの進行を早めたり、妊娠・出産・授乳が再発リスクを高めるということもありません。

 ただし、治療に制限が加わることはあります。妊娠週数や病状によって治療の組み立てを工夫します。

----妊娠中の乳がん治療はどのように進められるのですか。

土井先生 原則として、妊娠中の放射線照射や出産直前の手術などは、リスクが高いので行いません。また、妊娠初期は胎児の臓器形成期にあたり、この時期は化学療法を行えません。化学療法が必要な場合は、妊娠中期まで待って抗がん剤治療を行うのが一般的です。手術と化学療法(抗がん剤などの薬物療法)はどちらを先に行っても予後は変わらないとわかっているので、妊婦さんのがんの状況や妊娠期に応じて、治療計画を決めていきます。

 ただ、アドリアマイシン、タキサン系の薬剤は妊娠中に投与しても問題ないことがわかっていますが、分子標的薬のハーセプチンについては安全性が確認されていないため、使用は産後に限られます。

----授乳期についてはどうでしょう。赤ちゃんへの抗がん剤の影響が、最も心配だと思いますが。

土井先生 がんがある状態で授乳しても赤ちゃんにがんが移ることはなく、心配しなくて大丈夫です。手術を行う場合は、授乳中の状態では乳房が張ってしまって無理なため、薬で授乳を止めてから手術をします。

 化学療法を行う場合、薬剤によっては乳汁に分泌されるものもあるため、飲ませた赤ちゃんに副作用が出てしまう場合もあり、授乳を止める必要があります。

まとめ〜妊娠・授乳期の乳がん治療〜

検査 超音波検査や細胞診、針生検は実施可
マンモグラフィは実施可
放射線を浴びる腹部CTは原則不可
手術 麻酔薬が胎児に影響する妊娠前期や母体の循環器系に影響がある出産直前は不可
妊娠中期は可
授乳期の手術は授乳を止める必要がある
化学療法 妊娠初期は不可
妊娠中期以降は薬剤の種類によって使用可能なものがある
化学療法 妊娠初期は不可
妊娠中期以降は薬剤の種類によって使用可能なものがある
放射線療法 妊娠中は不可、出産後に可能
ホルモン剤治療 妊娠中は不可、出産後に可能
----土井先生、ありがとうございました。
次回は「乳がんと妊娠・出産 Part.2 薬物治療の影響について」 をお聞きします。

■ご協力いただいた医師

湘南記念病院 乳がんセンター長
土井卓子(どい・たかこ)先生

一環して乳腺外科分野で経験を積み、乳がん治療および乳腺分野での治療に従事。医師、看護師だけでなく、薬剤師、体験者コーデイネーターやリンパ浮腫ケアースタッフを組み込んだ乳がん治療チームの組織、また形成外科と連携した乳房再建などの総合的な乳腺治療を目指す。

日本外科学会専門医、日本外科学会指導医、日本消化器外科学会認定医、日本消化器病学会専門医、乳腺専門医、マンモグラフィ読影認定医、ICD。ピンクリボンかながわ代表。

■取材・文/及川夕子

メノポーズカウンセラーや女性の健康推進員などの資格を生かし、美容・健康・医療分野を中心に、新聞、雑誌、WEBメディアなどで取材・執筆を行っている。書籍の企画や編集、執筆も手掛ける。

(日本医療・健康情報研究所)

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