2017年10月24日

がんによる心のつらさを和らげる「サイコオンコロジー」 妊娠を希望するがん患者への心理的支援もテーマに

キーワード:ライフスタイル 治療
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がん治療のストレスで、うつ病になる場合も

 サイコオンコロジー(Psycho-Oncology)とは、心の研究を行う心理学(サイコロジー=Psychology)と、がんの研究を行う腫瘍学(オンコロジー=Oncology)を組み合わせた造語で、精神腫瘍学と訳されます。1980年代に確立したがん医療における「心」を専門とした新しい学問で、簡単に言うと、「がんと心の関係を研究し、心のつらさを軽くしたり、和らげたりすること」を目指しているものです。

 患者さんは「がん」と診断されてから、様々なストレスにさらされます。そしてあまりにストレスが強い場合、回復することができず、うつ病や適応障害になってしまうこともあるのです。こうしたストレス性の疾患にかかると心がつらいだけではなく、日常生活やがんの治療にまで悪い影響が及びます。さらに「第2の患者」といわれる家族もまた、心のつらさを抱えるようになることがわかっています。

 乳がんの患者さんですと、例えば、手術や治療によるボディーイメージの変化、ホルモン療法の影響、出産や結婚への不安、パートナーとの関係などが理由で、うつ病や適応障害を引き起こすケースが報告されています。

 最近では、がん患者さんやその家族に対して適切な心のケアを行うことの大切が認識されつつあり、精神腫瘍科を設置している病院が増えてきています。精神腫瘍科では、主に精神科医や心療内科医、心理士、看護師、ソーシャルワーカーなどがチーム体制でがん患者さんとそのご家族の支援にあたっていきます。

第30回日本サイコオンコロジー学会総会が開催

 2017年10月14日、15日には、品川区立総合区民会館「きゅりあん」にて、第30回日本サイコオンコロジー学会総会/第23回日本臨床死生学会総会の合同大会が行われました。テーマは「死までの生を生きる ~精神腫瘍学・死生学ができること~」です。

 学会総会は会員の医療従事者のみなさんを対象としたものですが、今回はがん体験者枠がつくられ、選考を経た40名のサバイバーも参加していました。

 立見が出る講演も多く、サイコオンコロジーに対する専門家のみなさんの並々ならぬ熱意を肌で感じることができました。

初の妊孕性をテーマにプログラムも

 どのプログラムも大変興味深いものでしたが、特に記憶に残ったのは、がん患者さんの妊孕性をテーマにした「挙児を希望するがん患者への心理的支援」と題されたシンポジウムでした。

 子どもを授かりたいがん患者さんにとって、がんの治療によって妊孕性(妊娠しやすさ、妊娠する力のこと)を喪失する可能性があるという事実は深刻な問題です。がん告知という大きなストレスを受けた中で、卵子、受精卵、卵巣組織の凍結保存などの妊孕性温存のための選択をしなければならないがん患者さんに、適切な情報提供、およぶ必要な心理ケアを行い、最良の選択を自己決定できるように支援をしていくなど、がん・生殖医療での心理的支援のニーズが高まっているといった内容でした。

 日本サイコオンコロジー学会総会で、妊孕性をテーマにしたシンポジウムが行われるのは今回が初めてとのことで、これからますますこの分野での研究や取り組みが進んでいくのではないでしょうか。


シンポジウム「挙児を希望するがん患者への心理的支援」の様子

 また、学会の終了後には、無料の市民公開講座が開催。学会の大会長を務められた埼玉医科大学精神腫瘍科教授の大西秀樹先生が、ファッションデザイナーのコシノジュンコさんにインタビューする形で、「いまを明るく、前向きに生きる」ためにコシノさんが心がけていることをお話くださいました。学会の締めくくりにふさわしい、元気が湧いてくるような素敵な講演でした。

 次回、第31回日本サイコオンコロジー学会総会は2018年9月21日、22日に石川県金沢市にて開催されます。一般の方も参加できる講座など設けられるかもしれませんので、ご興味のある方はぜひ。

■参考
日本サイコオンコロジー学会
・国立がん研究センター中央病院 相談支援センター 「がん医療と妊娠の相談窓口」

■取材・文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなどで取材・執筆を行う。

(日本医療・健康情報研究所)

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