民間保険の前に、まずは使える公的制度の確認を
がんで休職、失業したときに使える制度
制度内容は複雑で、概要を簡単に記します。細かい条件等については、相談先に問い合わせることをおすすめします。傷病手当金......病気やケガで会社を休んだとき
傷病手当金は、会社員や公務員が病気やケガのために仕事を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。自営業や専業主婦の人は受けることはできません。
(支給される期間)
支給開始した日から最長1年6ヵ月です。
仕事を休んだ日から連続して3日間の後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。
また傷病手当の受給中に退職した場合も、一定の要件を満たせば引き続き受け取ることができます。
(支給される金額)
÷ 30日 × 3分の2
※休んだ期間に給与の支払いがあってもその日額が、上記の傷病手当金の 日額より少ない場合は、傷病手当金と給与の差額が支給されます。
(相談先)
協会けんぽ(全国健康保険協会)、組合健保(健康保険組合連合会)
※「協会けんぽ」は、全国健康保険協会という団体が運営、「組合健保」は、企業が自前で健保組合を設立したものです。加入している社会保険は保険証で確認できます。詳細はご自身の会社にお問い合わせください。
雇用保険(基本手当)......失業したとき
失業中の生活を心配しないで、新しい仕事を探せるように支給される手当です。 就職しようとする意思や能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない「失業の状態」にあることが条件ですので、病気などのため、すぐに就職できない場合は受給できません。
(支給される期間)
・支給を受けることができる日数は、90日~360日。
・離職の日における年齢、雇用保険の被保険者であった期間、離職の理由などによって決定されます。
受給期間に病気、けがなどの理由により引き続き30日以上働くことができなくなったときは、その働くことのできなくなった日数だけ、受給期間を延長することができます。ただし、延長できる期間は最長で3年間です。
(支給される金額)
【基本手当日額】× 50~80%(60歳~64歳は45~80%)
基本手当日額とは、離職した日の直前の6か月に毎月決まって支払われた賃金の合計を180で割って算出した額で、年齢によって上限が決まっています。
※基本手当日額の上限額(平成28年8月1日現在)
・30歳未満 6370円
・30歳以上45歳未満 7075円
・45歳以上60歳未満 7775円
・60歳以上65歳未満 6687円
(相談先)
住んでいる地域のハローワーク
※国によって運用されているハローワーク(公共職業安定所)は、職業紹介だけではなく、雇用保険制度の窓口となる機関として、被保険者の資格の得喪・変更に関する手続、労働者(失業者)に対する失業等給付(求職者給付や教育訓練給付など)の受給手続も行います。
障害年金......がんで生活や仕事が制限されるようになった場合
病気やケガによって生活や仕事が制限されるようになった時に、受け取ることができる公的年金です。最近では抗がん剤の副作用や手術によるしびれや痛みといった場合でも受給できるケースがあります。
受給のための主な要件は以下の通りです。
・日本に居住する65歳未満の人
・初診日が国民年金や厚生年金といった公的年金制度の加入期間であること
・初診日から1年6か月以上経過した時点の身体の状態が法令に定める障害の状態にあると認定された場合
(相談先)
・ 自営業など→自治体(市区町村)の国民健康保険担当窓口
※お住まいの市区町村役場にお問合せください
・ 会社員、公務員など→年金事務所、年金相談センター
≫日本年金機構
■協力
本記事は、乳がん体験者のためのコミュニティサイトCheerWomanチアウーマンで、
「お金のことに関するアンケート」を実施していただき、その結果を参考にして制作しました。チアウーマン会員のみなさま、ご協力ありがとうございました!
■取材・文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなど
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