2017年03月06日

日本全国に広がり、注目を集める「がん哲学外来」とは

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 がんなどの病気のために不安な気持ちを抱えた患者さんの苦しみを少しでも和らげたいという想いから誕生した「がん哲学外来」。

 その発案者である順天堂大学医学部病理・腫瘍学講座教授の樋野興夫先生に「がん哲学外来とは何か」というお話をうかがいました。


がん哲学外来の生みの親、順天堂大学医学部教授の樋野興夫先生

医療現場と患者の間にある「隙間」を埋める

 「がん哲学外来」は2008年に順天堂大学病院で始まりました。

 がんなどの病気にかかった患者さんたちは多くの不安を抱えていますが、医療現場は忙しく、患者さんやその家族の精神的苦痛を和らげるところまでは対応できていないのが現状です。「がん哲学外来」は、そういった医療現場と患者の間にある「隙間」を埋めるためのものです。

 病院や医療機関に限らず、それぞれが行きやすい場所で、患者さん、家族、遺族、友人など様々な人たちが立場を越えて集まれる場として全国へ展開をしていくことを目指し、2009年に「NPO法人がん哲学外来」を設立、メディカルカフェという形で全国に広がり、現在は31都道府県に加え、ベトナムの首都・ハノイでもがん哲学外来が行われ、開催地の数は120ヶ所です。(2017年2月10日現在)

 2013年には、「NPO法人がん哲学外来」は「一般社団法人がん哲学外来」となり、全国での活動をサポートしています。

悩める人の居場所となる「がん哲学外来」

 「がん哲学外来」を始めた理由はいろいろありますが、直接的なきっかけは2005年に日本初の「アスベスト・中皮腫外来」を開設したことです。難しい病気を持つ患者さんたちに接した経験から、次に必要となるのは「がん哲学外来」だと感じました。行き場のない人たちに居場所をつくる必要があると思ったのです。

 5000円札の肖像で有名な、教育者の新渡戸稲造は第一高等学校(現在の東京大学)の校長だった時に、「悩める学生にとって校長室は敷居が高いだろうから」と、学校の近くに家を借りて、木曜日の午後にカフェのような学生が集まれる場所を作ったといいます。

 東大総長だった経済学者の矢内原忠雄も、そのカフェに集った一人で、本人も本郷通りにカフェを開きたいと考えていたのですが、胃がんにかかり、夢果たせずして亡くなってしまいました。尊敬するこの二人のように、私も対話の場をつくり、悩める人たちの気持ちに寄り添っていけたらと思ったんです。

 「がん哲学外来カフェ」では、参加者数人で1つのテーブルを囲み、お茶を飲みながら語りたい人が語るという形式で、特に何か決まったテーマがあるわけでもなく、しなければならないこともありません。お茶というのはかなり大切で、気持ちを落ち着かせてより深い対話ができるようになるのです。また希望者とは個人的な面談もしています。

 「がん」という名前がついていますが、実際、がん患者さんは参加者の6割くらいで、家族や友人をサポートしたいと考えている人たちも多く参加しています。気持ちの行き場をなくした人たちは、不安や悔しさ、悲しみを口に出せるような「場所」を探している。「がん哲学外来」とは、空っぽの器です。来た人が水を入れることが大切なんです。

 よく器に水を入れて用意している所がありますが、それではまるっきり逆になってしまう。底が抜けない、しっかりした空っぽの器が必要だと、私は思っています。


参加者に優しく語りかける樋野先生。会場はとても和やかな雰囲気

全国で行われている「がん哲学外来」をチェック!

  一般社団法人がん哲学外来のWEBサイトには、全国で行われている「がん哲学外来」が都道府県別と日程順に掲載されています。 ≫一般社団法人 がん哲学外来

■取材・文/瀬田尚子
出版社勤務を経て、フリーランスのライター・編集者に。医療・健康分野を中心に雑誌、書籍、WEBメディアなど

(日本医療・健康情報研究所)

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