2016年03月
2. 治療について

9. 薬物療法の種類と特徴

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薬物療法は、ホルモン剤を使った「ホルモン療法」と、がん細胞に特有の分子を狙いうちにする「分子標的治療(抗HER2療法)、抗がん剤を使った「化学療法(抗がん剤治療)」の3種類です。

抗がん剤をはじめ、それぞれの薬に副作用があります。

ホルモン療法の特徴と副作用
閉経前と閉経後では使用するホルモン剤が異なる

 ホルモン療法は女性ホルモンのエストロゲンを取り込んで増殖する乳がん、つまりホルモン受容体陽性乳がんに効果があります。手術後に行うことで、再発を予防する効果が期待でき、進行・再発乳がんでは進行を抑える効果が期待できます。ただし閉経前と閉経後では、ホルモンが作られる環境が異なるため、治療に用いるホルモン剤が異なります。

 ホルモン剤は、大きく体内のエストロゲンを減らす薬(LH-RHアゴニスト製剤、アロマターゼ阻害薬)と、エストロゲンがホルモン受容体と結合することを阻害する薬(抗エストロゲン薬)の2種類に分けられます。手術後のホルモン療法は、閉経前では抗エストロゲン薬のタモキシフェンを5年間服用すると再発の危険性を半分に減らすことができます。場合によってはLH-RHアゴニスト製剤(皮下注射)を2~5年間併用します。閉経後では、アロマターゼ阻害薬と抗エストロゲン薬を5年間使用します。

 一般にホルモン療法の副作用は軽いのですが、代表的なものにはホットフラッシュと呼ばれるほてりやのぼせがあります。他には、性器出血や膣の乾燥などの生殖器の症状、関節のこわばりや痛み、気分の落ち込みやイライラなどがあります。また閉経後の場合、抗エストロゲン薬のタモキシフェンを5年間服用すると、子宮体がんになるリスクが2~3倍に増えると言われていますが、乳がん再発予防効果の利益のほうが子宮体がんの利益を上回ると考えられます。

分子標的治療(抗HER2療法)の特徴と副作用
がん細胞に特有の分子を狙いうちする

 がん細胞に特有の分子を狙いうちにする治療が「分子標的治療」です。抗がん剤のように正常細胞を傷つけることなく、がんの増殖を抑えることが期待されています。乳がんの増殖に深くかかわっているたんぱく質であるHER2を標的に攻撃をする抗HER2療法は、HER2陽性乳がんのみに用います。乳がん全体のうち、15~20%がHER2陽性です。

 代表的な抗HER2薬はトラスツズマブ(商品名ハーセプチン)です。これは乳がん治療で最初に承認された分子標的薬で2001年に承認された当初はHER2陽性の転移性乳がんだけが適応でしたが、その後、2008年には術後薬物療法、2012年には術前薬物療法にも使えるようになりました。

 術後でトラスツズマブを用いる場合は、抗がん剤と組み合わせた治療を行うことで、再発する危険性が半部近くに抑えられます。トラスツズマブは1週間、あるいは3週間に1回の感覚で点滴をし、1年間継続します。

 副作用については、抗がん剤ほどではありませんがないわけではありません。初回の投与後には、約40%の患者さんが発熱と悪寒を感じます。頻度は少ないのですが重篤な副作用として、心臓機能の低下と呼吸障害器があります。

化学療法(抗がん剤治療)の特徴と副作用
正常な細胞にも影響を与えるため、様々な副作用が

 体のどこかに潜んでいるかもしれない微小転移を抗がん剤で叩き、転移や再発を予防する治療法です。術後に抗がん剤治療を行うかどうかは、腋下リンパ節の転移やしこりの大きさ、サブタイプ分類、患者さんの意向を考慮して個別に選択しますが、HER2陽性乳がんやトリプルネガティブ乳がんに対してはより積極的に検討していきます。

 抗がん剤は飲み薬と点滴に分かれます。多くは1週間、または3週間に1回を1サイクルとして、外来通院治療で行われます。また1種類だけを用いることはほとんどなく、複数の薬を使ったほうががんを抑える作用は高くなります。

 化学療法(抗がん剤治療)は、正常な細胞にも影響を与えてしまうため、様々な副作用が現れます。特に細胞分裂が活発な粘膜や毛母細胞、血液への影響は大きく、吐き気や脱毛、下痢、口内炎、白血球の減少といった副作用が多く見られます。また抗がん剤が卵巣に障害を与え、閉経状態になることがあります。治療開始時の年齢が40歳以上の場合は閉経になるリスクが高まります。もし無月経になると、40歳以上の場合はそのまま閉経となる可能性が高いです。

薬物療法の副作用

主な副作用 生活への支障の度合い ホルモン療法 ほてり・のぼせ、性器出血・膣の乾燥といった生殖器の症状、関節のこわばり・痛み、骨密度の低下、気分の落ち込み、イライラ ややある 分子標的治療(抗HER2療法) (初回投与時)発熱と悪寒、ほか重篤な副作用として、心臓機能の低下と呼吸器障害 ややある 化学療法(抗がん剤治療) 吐き気・嘔吐、下痢、食欲不振、口内炎、脱毛、白血球の減少による感染症、貧血、倦怠感、爪の黒ずみ、卵巣機能の障害など かなりある

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