2016年03月
3. 乳房再建について

3. 再建方法の種類と特徴

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乳房再建の方法は、再建のときに使う素材によって分けることができます。保険適用されるのは、患者さん自身のからだの組織を移植する「自家組織再建」と、シリコンなどでできた人工物を挿入する「インプラント再建」です。

また、脂肪注入による再建方法もあります。最近では取り出した脂肪組織から幹細胞の抽出・培養をする新技術もが注目を集めています。

自家組織、インプラント、脂肪注入、そして最新技術に注目

 乳房再建の方法は、患者さん自身のからだの組織を移植する方法(自家組織再建)と、シリコンなどでできた人工物を挿入する方法(インプラント再建)の2つに大きく分かれます。長い間、乳房再建に健康保険が適用となるのは、自家組織再建のみでしたが、2013年7月からは乳房切除術(全摘術)を行った患者さんに限り、インプラント再建も健康保険の適用が認められるようになりました。(タトゥーによる乳輪の再建は保険適用ではありません)

 さらに最近では、患者さん自身の体から吸引した脂肪と、その脂肪由来の「幹細胞」を乳房などの損傷部位や補強したい部位に注入移植する方法が注目されています。

自家組織再建

 腹部や背中などの「(筋)皮弁」(皮膚や脂肪、筋肉、血管をつけたままの組織)を移植して乳房を作ります。

 腹部の皮弁を移植する方法を「腹直筋皮弁法」といい、背中の皮弁を移植する方法を「広背筋皮弁法」といいます。

 そのほか、新しい方法で「穿通枝(遊離)皮弁法」というものがあります。穿通枝と呼ばれる細い血管ごと体から皮弁を切り離し、別の場所に移植します。筋肉をほとんど取らず、脂肪細胞を中心に使うため、筋力への影響が少なくてすみます。また一度体から皮弁を切り離すため、腹部、背中だけではなく、臀部、太ももなど、採取する部位に多くの選択肢があります。

インプラント再建

 エキスパンダーという皮膚を伸ばす袋を胸の下の筋肉に入れて、その中に生理食塩水を徐々に入れて、6ヶ月ほど期間をかけて皮膚を伸ばしていきます。そのあとエキスパンダーをインプラントと入れ替える方法です。(エキスパンダーを使用しない方法もあります)

 2014年の時点で保険適用となる乳房再建用のインプラントは3種類です。されにそれぞれに大きさのバリエーションがあります。表面がつるつるしているスムーズタイプに比べ、表面がざらざらしているテクスチャードタイプは挿入後に移動や回転がしにくく、被膜拘縮も起こりにくいのが特徴です。

 中身の素材ですが、柔らかめのジェル状シリコンの場合、検診でマンモグラフィーを行うなどする際に破損の可能性があります。しかし新しく開発されたコヒーシブシリコンは、粘度が高く、たとえ袋に穴があいたとしても中身がすぐには漏れ出さない素材です。またこのコヒーシブシリコンの開発により、ラウンド型に加え、より乳房の形に近いアナトミカル型が開発されました。アナトミカル型についてはテクスチャードタイプしかありません。

脂肪注入法

 太腿などの脂肪を吸引で取り出し、それを乳房へ注入する再建方法です。

 以前は、注入後の生着率が低いことが問題で、他の2つの再建方法と比較するとあまり選択されない方法でしたが、近年、脂肪の取り扱いや注入法の進歩により生着率が高まり行われるようになってきました。

 また、乳がんの手術後や再建後に乳房の形を整える方法として用いられることも多いです。

新技術

自分の幹細胞を使う医療技術 「CAL(Cell Assisted Lipotransfer)」CAL組織増大術

詳細はこちら(セルポートクリニック横浜) ▶

 CAL組織増大術は注入移植する脂肪に自身の「幹細胞」を追加し、注入移植する方法で、厚生労働省が定める「高度美容外科医療」に日本で唯一該当した、最新の再生医療です。患者さんの腹部や太ももから吸入管で脂肪を吸引し、この脂肪の一部から「幹細胞」を抽出、残りの脂肪と混合し、幹細胞密度の高い脂肪を専用の注射器で注入します。

 これまで形成外科の分野で、体の様々な部位の形を整えるために吸引脂肪の注入が行われてきましたが、生着率が高くて3割で注入後にしぼんでしまうという問題点がありました。しかし「幹細胞」を追加したCALでは生着率が約約6~9割と高くなります。

 自家組織再建、インプラント再建は乳房切除術(全摘術)の患者さんのみに対応する再建法ですが、乳房切除術(全摘術)、乳房温存手術の両方に対応できるのがCALの大きな特徴です。またインプラントで再建したけれど段差が目立つなどの場合もCALを組合すことで自然ななだらかな乳房にすることも可能です。

再建方法の比較
  自家組織 インプラント
対象 全摘手術を受けた方 温存手術を受けた方 全摘手術を受けた方
  皮弁法 Step-CAL CAL インプラント インプラント併合CAL
手術 体への負担
手術時間
入院期間
大きい
6~10時間
約2週間
小さい
3時間
1泊または日帰り
小さい
3時間
日帰り
小さい
2~3時間
1~3日
小さい
3時間
1泊
新たな傷 皮弁採取部位 脂肪吸引部分(5mm) 脂肪吸引部分(5mm) なし 脂肪吸引部分(5mm)
特有の合併症 皮弁の壊死 のう胞形成 のう胞形成 破損、被膜拘縮 破損、被膜拘縮
乳房の特徴 柔らかく、温かい 柔らかく、温かい 柔らかく、温かい 若干固硬く、冷たい 表面は柔らかく、温かいが、奥の方はやや固い
形成しやすい乳房 制限なし 大きすぎない乳房   下垂のない乳房 下垂のない乳房
加齢による変化 左右差が出にくい 左右差が出にくい 左右差が出にくい 左右差が出やすい 左右差が出やすい
保険適用※ あり なし なし あり なし

※のう胞形成...一度に注入できる脂肪量に限界があるため、しこりを作ることがある

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